2014年10月3日金曜日

文学趣味

イギリスの作家ベネットが1909年に著した文学談義であり、読書のすすめである。


山内義雄訳、岩波文庫、1943年。
我が国でも読書のすすめはよく書かれているが100年前、イギリス人がものした著作はどんな感じであろうか。そういう興味を持って読んだ。
一言で感想を言えば率直に述べてあり、また具体的な指針として実用的である。ただこの実用的というのは当時のイギリス人にとって、という意味であり今日の我々にとっては必ずしもそう言えない。例えば、全14章のうち3章を使って読むべき英文著作のリスト、17世紀まで、18世紀、19世紀の代表作品を挙げている。それが作者、書名だけでなく、全体で値段は2614志7片とある。漢字は夫々ポンド、シリング、ペンスである。今日の我々にとってこの値段について感覚をもてない。

また当然のことながら今日の日本人にはなじみのない名が多く見られる。散文作家と詩人に分けられ列挙されている。19世紀の詩人の一欄を見るとケブル、ダーリイ、ベトウズ、ベイリイ、ド・ヴィア、パトモア、ドベルなど例に過ぎないが私など名も知らない。もっとも英文学専攻の人なら既知かもしれないが。散文作家ならよりなじみがあるはずである。19世紀は多いので散文作家も想像的、非想像的に分けてある。前者は今の言葉で言えばフィクションであり、後者はノンフィクションということか。19世紀の想像的散文作家の中にもランダー、ハント、ミトフォード、ゴールト、フェリアー、ジェロルド、カールトンなどなど、自分の知識の範囲外が珍しくない。

それに挙げている作家はイギリスばかりのようだ。不明の著者もそうなんだろう。我が国の読書論で読むべき名作を挙げるとき、日本文学ばかりにする人いるだろうか。
実用的という点では第9章「韻文」では苦手な詩に親しむ方法を、順番を追って具体的書名、読み方を説明し指導している。

懇切丁寧というか自信があるというか大英帝国末期の、これが典型でもなかろうが、文学のすすめはかなり異なっている。

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