2018年4月30日月曜日

我が恋は燃えぬ 昭和24年


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溝口健二監督、松竹京都映画。田中絹代主演。

女性解放運動家として知られた福田英子の自伝『妾の半生涯』を自由に脚色した映画。
明治10年代、岡山の教育家の家に生まれた田中は、当時有名だった女論客(三宅邦子)が郷里に来た際、すっかり感銘して自由民権の思想に同調する。

恋人の小沢栄太郎が上京する際、港へ見送りに来ると、先頃家の下女をやめた水戸光子が売られていくと知った。なんとか助けたいと家に戻るものの、どうにもならない。
やがて田中は小沢を慕って上京する。小沢の下宿へ行き会うと、むしろ迷惑顔される。
小沢が勤める自由党の事務所へ行き、大物の菅井一郎に会い、仕事をもらう。その後小沢が政府側の犬と知り、彼と別れる。菅井と結婚する。

秩父の製糸工場のストへ仲間と駆けつける。そこではあの水戸光子が働いており、工場側に反抗して放火した。その場に居合わせた田中も犯人の一人と間違えられ、逮捕される。入獄中、小沢が来て自分の言いなりになれば出獄させると言うが聞かない。
憲法発布の恩赦で出獄する。菅井と共に運動を進めていくつもりの田中は、水戸も同居させる。しかし菅井と水戸が関係を持つようになる。菅井を難詰するが開き直られ、やはり一人の男にすぎなかったと悟る。
田中は自ら運動を勧めていくつもりで汽車に乗る。すると水戸も同乗しており、一緒に連れていってくれと言う。

明治初期の婦人としては例外的に進歩的、行動的であった福田英子の生涯を元にした映画は、この戦後民主主義の昂揚期であった製作当時の思潮にふさわしいと言える。

秘話ノルマントン号事件 仮面の舞踏 昭和18年


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佐々木啓祐監督、松竹映画。佐分利信主演。

明治19年に起きた英国の船ノルマントン号遭難事件を題材にとった映画。
まず当時の鹿鳴館など、日本の西洋迎合の姿勢を批判する場面が続く。婚約者と妹は西洋かぶれで、佐分利は苦々しく思っている。遂には婚約者に向かい婚約の破棄を言うまでになる。

横浜から出航した英国船ノルマントン号は、紀州沖で嵐に会い、沈没した。その際、船長や船員など西洋人はボートで脱出するが、日本人の船客25人は全員死亡した。ところがその後の裁判で、イギリス人の船長らは無罪となる。なぜ乗客を見殺しにした船長が無罪なのか。これは当時、領事裁判権というものがあってこの裁判自体を同じイギリス人がしたから。実際の当時も日本全国で悲憤慷慨の世論が沸き立ったらしい。

刑事裁判を起こす。映画では中国人の料理番が助かり、その証言によって英国側の責任を追及しようとする。しかしその証人になる中国人が攫われる。それには佐分利に恨みを持つ婚約を破棄された女や妹が助力していた。友人が馬車を追う。英国側と撃ち合いになり、何人か倒す。それが裁判になる。佐分利は許可を貰い法廷に出て日本側の主張をする。
船長責任の裁判は有罪になるものの、刑は軽微なものであった。悔しがる日本人たち、いつかはイギリスに思い知らせると言う。映画の最後は第二次世界大戦初期の戦闘を映し、そこでイギリス国旗が兵たちに蹂躙される場面。

戦争中の製作であり、敵国イギリスにこのような屈辱を受けていたと知らせる意図があったのだろう。
日本髪の桑野通子が出ており、洋装の多かった彼女の貴重な映像が見られた。