海援隊快挙 昭和8年

 

志波西果監督、朝日映画同盟、無声映画。月形龍之介主演。

月形龍之介が坂本龍馬を演じた映画である。

これも無音の映画なのであるが、中間字幕が多く、夫々長文である。筋は追いやすい。

ここで驚いたのは坂本が徹底した平和主義者として、戦後の非武装中立論者も驚く反戦主義者と描かれていることである。人類のためという言葉が何回か出てくる。浅学にして坂本がそれほど平和主義者だったとは知らなった。製作年が昭和一桁で満州事変以降なので、映画はもっと好戦的と先入観があった。

また周囲のいきり立つ、いかにも当時の侍はこうであったろうと思わせる連中と対比的で、随分クールである。更に愛人で妻になったお龍とのからみなどもあり、坂本はかなり近代的に見える。

この映画でも近江屋で中岡慎太郎と共に討たれる場面の後、二人の息も絶え絶えの会話で尺をとってある。国立映画アーカイブで併映された阪妻版坂本龍馬と同様のつくりである。同じ上映で坂本中岡の最後の長い会話をみることができた。

月形龍之介はもちろん若いが『斬人斬馬剣』の時のように分からないわけでない。歳をとって渋くなった方が月形は見栄えがすると思う。