2017年8月25日金曜日

青の炎 平成15年



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蜷川幸雄監督、「青の炎」製作委員会制作、二宮和也主演。
有名な舞台演出家蜷川幸雄の監督による映画である。家庭内の邪魔者を「始末」した高校生の悲劇。
主人公の高校生の男は、母、妹の三人で暮していた。今はかつて離婚した義理の父親が、しばらく前から家に居座っている。何もせず酒など要求して家にこもっている。主人公は鬱陶しくてたまらず、男を置いている母親に怒鳴り散らす。
彼は男を殺す計画を立てる。学校の美術の時間を抜け出し、実行する。警察にもわからずうまくやったと思い込んでいた。しかし彼の悪友、今は学校を休んでいる友人が、彼が学校を出て家に戻ったところを見ていた。それをネタにゆする。カネは自分がバイトで働いているコンビニを友人が襲い、レジのカネを取るという計画を立てる。これは友人を殺す計画だった。うまくいきばれる心配はなくなった。しかしさすがに警察もおかしいと気づく。尋問されもう主人公も観念する。家族や友人と別れ、想定される行動をとる。

色々気になる設定はある。殺すほど元義理の父親はひどいことしていない。秋吉久美子演じる母親がなぜ元夫を追い出さないかの理由として挙げる、主人公の妹を連れていってしまうから、には全く説得性がない。寄生するしかない、あんな男が娘を連れて出て行っても困るだけ。やるはずもない。最大の物足りなさは、終わり頃になるとどう終わるか想像がついてしまう。そのとおりに終わる。
 
主人公の男の子は可愛く、ファンにはそれだけで価値があるだろうし、相手役でそれなりの役を果たす女高生は松浦亜弥という人気アイドルがやっている。名前だけで見たことなかった芸能人を見られた、そういう意味で価値があった。

吉川洋『人口と経済成長』中公新書 2016

商品の詳細


既に始まっている人口減は、今後少子高齢化を一層促進させる。人口すなわち労働力の減少によって日本経済はもう成長が見込めない、悪化するとの悲観的な見方が支配している。
著者はこのような解釈に対して、経済成長を決めるものは人口でない、イノベーションであると主張する。
本書は経済学では人口をどう扱ってきたのか、またこれまでの人口動態はどうであったか、経済成長に人口はどう関わってきたのか、更には人間にとって経済とは何か、という根本的な問題も論じる。
本書によって過去の偉大な経済学者の人口に対する見方や、人口と経済についての知識が得られる。更に過去の著『高度成長』でも示されたように、読ませる、読んでいて面白いといえる筆力は魅力である。

労働力減少の議論で、必ず持ち出される外国人労働の受け入れについては、本編で語られず、後書きで簡単に触れているだけである。人口減少そのものをマイナスと捉える必要はないとする著者の立場からか、と思われる。

私見ではあるが、外国人労働についてはその「費用」をきちんと考えて議論すべきである。欧米でどれほど異人種間共存の社会コストをかけているか、知っていながら、あたかも抽象的な労働力としてか考えていない議論、とまで行ってない言い放しが多すぎる。欧米のように日本の将来が混乱することが、人口減少がもたらす(もたらすとして)生産減より望ましいのか。

帝都物語 昭和63年



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実相寺昭雄監督、エクゼ制作。明治末年から昭和初期を舞台にして、東京を殲滅せんとする謎の男と、それを防ごうとする勢力の、双方超能力を駆使した戦い。


明治の終わりから話は始まる。東京改造計画を練る渋沢栄一等。一方で大昔の平将門の怨霊を蘇えらせ、東京の壊滅を意図する加藤と名乗る軍服をまとった長身の男。
加藤は平将門の霊を蘇らせる霊媒とするため、女をかどわかす。その女の兄や霊媒師が加藤と戦う。関東大震災を起こすものの、完全に東京は壊滅しない。

復興が進む昭和初期。今度は自らと女の子供と、加藤が信じる少女を銀座で攫う。女の夫、子供の父に嫁いだ女が加藤と戦う。並行して東京初の地下鉄銀座線の建設現場。そこに地脈が走っているので、化物が工事の邪魔をする。実際にあった我国初のロボット学天則を使い化物退治する。地脈が断たれ、加藤の目論見は失敗する。
今回加藤を倒したと思われたが、映画は最後で、彼の復活を予言して終わる。

バブル期に制作された映画で、お金をかけて街並みの再現などしており、普通の日本映画にみられるしょぼい感じがない。超能力を駆使した戦いが繰り返される。長い原作を縮めている(それでも映画としては長尺)ので、同じような戦いに尺をとり、また前半で攫われる女と、後半で活躍するその兄の妻も一見すると似ている。
そういう訳で映画としての出来はそれほどでもなく、主人公の加藤の存在感が話題となっている映画である。