ガイ・ハミルトン監督、英、105分、アガサ・クリスティ原作、ミス・マープル物である。
イギリスの田舎の邸宅で映画の撮影が行なわれる。主役はかつて大女優で長らく映画から遠ざかっている女優である。エリザベス・テイラーが演じる。夫は監督でロック・ハドソンが演じる。2023年2月28日火曜日
クリスタル殺人事件 The mirror crack’d 1980
ヴァンキッシュ Vanquish 2021
ジョージ・ギャロ監督、米、96分。
モーガン・フリーマンは数々の功績を残し、今は引退している警官である。しかし実際は裏で悪事を働いていた。ゴンブリッチ『美術の物語』 The story of art
1909年欧州に生まれた美術史家、ゴンブリッチによる美術史。初版は1950年に出て最終版は1995年でその翻訳である。主に西洋美術を扱っている。
優れた美術に対して、著者は感激の言葉を連ねる。これまで読んだ淡々とした記述の美術史と比べると、著者ははっきり自分の評価を表明している。また前の時代と比べ、この作品はこういった点で優れているという比較を良くする。まず美術一般論から始める。その後、地域別ではエジプトの美術の解説がある。ギリシャに移るとエジプトに比べ、ギリシャ美術はこんなに優れていると書いてある。エジプト美術はギリシャ美術を持ち上げるための書いたのかと思った。その後の時代にしても、ある美術は前の時代のどれそれに比べ、こういう点で優れているという記述が結構出てくる。人間は悪く言う方を良く覚えるものだから、比較で下に扱われた美術をたいしたことないと思ってしまうかもしれない。
本書は西洋美術に限っていない。その他では中国の美術も若干触れている。日本については中国の影響下にあったと簡単に書いてある。中国を高く評価し、日本は付け足しという扱いは少なくともかつての西洋人が東洋を論じる際には標準である。
以下は本書の感想ではない、触発された個人的意見である。中国の美術がそれほど優れているというなら具体的にはどのような作品があるか。この本を読むような人なら本書に出てくる美術をそれなりに知っているだろう。美術愛好家でなくとも、日本人なら『モナ・リザ』とか『ヴィーナスの誕生』をたとえ名は知らなくとも、大抵の人が絵自体は知っていると思う。それに対して中国美術は名作を挙げろと言われて、どの程度の人が何らかの答えを出せるか。中国美術は優れている筈なのに、なぜか。たまたま日本の美術教育、鑑賞の環境が遅れている、あるいはおかしいのか。西洋人が高く評価する中国美術は、欧米では日本より有名なのだろうか。(河出書房、2019年)
2023年2月26日日曜日
キング・コング King Kong 1933
メリアン・クーパー、アーネスト・シュードサック監督、米、100分。
怪獣映画の古典。映画監督は映画撮影のための女優を捜していた。街で気に入った女を見つけ、船で遥か彼方の島に向かう。北杜夫『マンボウ雑学記』(岩波新書) 1981
小説家の北杜夫による、本人曰く「中学生や高校生むきのエッセイ」(p.1)である。内容は「日本について」「お化けについて」「看護婦について」「躁鬱について」の四章から成る。
「日本について」では日本という国の成り立ち、古事記や日本書紀の内容の解説から始まり、戦前は学校で教えられていたが、戦後は全く追放された神話その他について北杜夫流の説明がある。著者が日本をどうとらえているか分かる。「お化けについて」では著者はお化けが大好きらしく、お化けに関する著者の蘊蓄が延々と語られる。「看護婦について」では著者が経験した日本と外国の看護婦について語られる。昔の話なので外国も日本も今では変わっているだろう。「躁鬱について」では著者がその患者でもある、また精神科医として接した経験から躁鬱病を説明している。
ヤンキードゥードゥルダンディ Yankee Doodle Dandy 1942
マイケル・カーティス監督、米、126分、ジェームズ・キャグニー主演。
戦意高揚のためのミュージカル映画である。主人公のジョージ・コーハンは実在の作曲家、芸人で、それをキャグニーが演じる。
キャグニーが時の大統領を演じる劇を上演していると、本物の大統領から呼ばれる。大統領からキャグニーはこの劇を演じるようになった経緯を聞く。キャグニーが説明するこれまでの人生が映画の主要部分である。キャグニーは芸人の家に生まれた。妹も後に生まれた。一家四人のコーハンは組を作り有名になる。主人公は子供の時から自信家で、そのためにいらぬ軋轢を生じる場面が度々だった。成人してから好きな女と結婚する。キャグニーはそのうち親や妹を亡くす。老いて芸から引退したキャグニーだがアメリカが参戦すると自分の芸を再び披露するようになる。その舞台でのキャグニーの踊り、歌が映画の見物となっている。
昔観た際、キャグニーの歌のうち、戦争相手国の日本やドイツを非難するところの歌詞が字幕で出ていなかった。それだけ昔の記憶にある。ところが今回の見直すとそのような場面はなかった。当該部分は歌、歌詞だけでなく、そっくり削除してしまったのだろうか。
2023年2月21日火曜日
屋敷女 A l’interrier 2007
アレクサンドロ・バスティロ、ジュリアン・モーリー監督、仏、82分。
雨の中、車が衝突する。運転していた夫は死に身重の妻は助かる。地獄の英雄 Ace in the hole 1951
ビリー・ワイルダー監督、米、112分、白黒映画、カーク・ダグラス主演。
ニューメキシコ州の街の新聞社にカーク・ダグラスがやって来る。かつてニューヨークその他の大都市で記者をしていたが醜聞を起こして首になり、田舎に来たのである。ダグラスは如何に自分が大記者か大口を叩き、雇って欲しいと言う。ここで名を挙げ、また大都市に戻る気でいた。一年経っても田舎なので事件らしい事件が起きず、ダグラスは腐っていた。2023年2月19日日曜日
欲望のあいまいな対象 Cet obscur objet du desir 1977
ルイス・ブニュエル監督、仏西、99分。
スペインからフランスに向かう列車の発車間際、中年の男は駆けてきた若い女にバケツの水を浴びせかける。列車で同室になった者らから、その理由を問われる。その説明が映画の大部分である。デジャヴ Déjà vu 2006
トニー・スコット監督、米、127分、デンゼル・ワシントン主演。
マルティ・グラで軍の兵士やその家族を多く乗せたフェリーがニューオーリンズ港を出た直後に爆破炎上した。犠牲者は五百名以上になった。公安官のワシントンは若い女の死体を発見する。船の爆破のせいでなく予め殺されていたようだ。しかもこの女が殺されたのは船の爆破に関係あるらしい。2023年2月17日金曜日
ビリディア Viridiana 1961
ルイス・ブニュエル監督、西、90分、白黒映画。
女主人公は修道院にいる。叔父からの要望で会いに行く。これまでほとんど接触がなかった。それでもお金の世話にはなっている。義理で叔父の家に行く。叔父は広い屋敷でやもめ暮らしをしていた。ビリディアナがいい加減帰ろうとすると、叔父は求婚するのである。それでもふりきって家を出た。駅で叔父が自殺したと聞き、戻る。叔父を死なせてしまったビリディアナは悔恨する。2023年2月16日木曜日
地獄に堕ちた勇者ども The damned 1969
ルキノ・ヴィスコンティ監督、伊西独、157分。
映画は鉄鋼業を営む一家の長の誕生日の祝宴から始まる。ナチスによる国会議事堂放火事件の知らせが来る。社長である老人はその夜射殺された。容疑者と思われる反ナチスの男は逃げていた。キャッシュ・トラック Wrath of man 2021
ガイ・リッチー監督、米、126分、ジェイソン・ステイサム主演。
ステイサムはギャングの親玉で現金輸送車が出てくるところの下見に来ていた。丁度息子が車に同乗していた。ステイサムが買い物に行った隙に現金輸送車を襲う別のギャングの襲撃がありたまたま近くに止まっていたステイサムの息子は殺される。ステイサムも銃弾を喰らった。気が付いてみると息子が死亡したと知らされる。2023年2月13日月曜日
赤い砂漠 Il deserto rosso 1964
ミケランジェロ・アントニオーニ監督、伊仏、120分、モニカ・ヴィッティ主演。
工場のある殺風景な場所に、ヴィッティは幼い息子と一緒にやって来る。他人が食べていたパンを買って陰で食べる。2023年2月12日日曜日
ラスト・バレット Cold blood legacy 2019
フレデリック・プティジャン監督、仏ウク白、91分、ジャン・レノ主演。
ロッキー山脈、雪の林の中、雪上車が駆け抜ける。乗っているのは若い女。転倒する。脚などに怪我をし、這っていく。2023年2月10日金曜日
福田歓一『近代の政治思想』岩波新書 1970年
いわゆる社会契約説、ホッブズ、ロック、ルソーの思想、その諸前提の説明が主である。そもそも論と言うべき前提の説明から始まり、最後には現代での意義を語る。連続講演会を文章化したものであり、極めてやさしく解説している。話すとなるとどうしても例を多く出す。それで理解させようと務めている。ただそのせいで冗長な感を否めない。特に最初の方はそうである。もっと簡単に済ませ、社会契約説三人男の説明をもっと詳しく書いた方が良かったと思う。この講演は昭和43年に行なわれた。もう半世紀以上も昔である。結びは「遺産と現代」と題され、当時の著者の問題意識を書いている。著者は東大法学部教授でいわゆる進歩的知識人の立場からの意見である。だから親社会主義なのだが、次の文には驚いてしまう。
「・・・スターリン体制が容赦ない粛清の大へんな数の人名を奪ったのに対して、中国が「階級敵」に対してさえ、声明を奪うことしなかっただけに・・・」(p.187)
2023年2月7日火曜日
柳川範之『元気と勇気が湧いてくる経済学』 2011
経済学の考え方を利用した人生論のような本。
まず選択の問題で、埋没費用の考え方を紹介する。覆水盆に返らず、で過去にこだわっては意味がない。次にこれまた選択の際の機会費用を解説する。機会費用と埋没費用は経済学で費用を考える際に基本なのでまず書いたのだろう。次に恋愛と研究開発は似ている?という章で少しずつ前進の必要を説き、オプション理論で将来を補償する手があると説明。行列の出来るラーメン屋を素材にして稀少性のある財の配分という経済学の基礎に触れる。また二次会の設定から次の次を考える、それで条件財の話になる。各人が発する信号、これの意味、効用を考える。将来を見据えるという話から、未来の管理、未来は固定していない、変わっていくものだと説く。
いずれも人生論の体裁を取り、経済学の考え方を説明している。(日本経済新聞社)
2023年2月6日月曜日
バウマン『この世で一番おもしろいミクロ経済学』 The cartoon introduction to eccnomics 2011
漫画によるミクロ経済学の教科書である。漫画だからといって馬鹿にできない。結構高度な内容が書いてある。サンク・コスト(埋没費用)や機会費用の説明がまずしてある。またゲーム理論の説明もある。
あまり正統的な教科書でなく、かなり個性的な本である。入門用としては必ずしも適さないかもしれない。絵がほとんどでそれに文字による解説が書いてあるから、優しいと勘違いする人が出てきそうである。もっとも経済学の説明に絵を多用するのは望ましいと思われる。文章で書いてその内容を理解しにくい事柄でも、絵解きすれば分かりやすくなる。
文章しか読まない人がいるが、図表を見れば理解が進む場合が結構ある。(ダイヤモンド社)
2023年2月4日土曜日
檀一雄『リツ子・その愛』 昭和25年
著者の最初の妻である律子が題名となっているが、最初の方は中国へ報道員として渡った経験が占める。昭和19年に洛陽に行かないかと誘いがあり、すぐに承諾する。予定は3ヶ月だったが自分の意思で長期にわたり中国各地を回る。そこでの経験が書いてある。田舎の福岡に戻る。妻の律子は病気であった。福岡周辺の地をあちこち移る。親などとのごたごたがある。生まれて間もない息子太郎の記述も多い。終戦を迎える。福岡西方の半島にある田舎に引っ越し、そこで暮らす。
私小説であり、著者が語る型式である。終戦を迎えたあたりの描写は当時の日本人がどのように感じていたかの一例として興味がある。(新潮文庫、昭和42年改版)
2023年2月3日金曜日
加藤隼戦闘隊 昭和19年
山本嘉次郎監督、東宝、109分、藤田進主演。
陸軍の協力のもとに作られた、実在の加藤健夫少佐(後に昇級)をモデルにして、真珠湾攻撃以前から加藤が戦死した昭和17年5月までを映画化した。南洋が舞台である。豪放磊落で部下に慕われる加藤の生き様を描いている。