2017年12月26日火曜日

フリーマン『夜霧の怪盗』木村毅文 ポプラ社 昭和31年



 「世界名作探偵文庫」の画像検索結果
世界名作探偵文庫の一冊。
ソーンダイク博士ものの一で、指紋が鍵となる推理小説的作品。

医学を修めた失業中の青年は、ソーンダイク博士の許で働くことになる。法医学や弁護士などを生業としている学者である。
高価なダイヤが盗まれる事件が起こる。容疑は金庫の中に残っていた血液から、甥の青年にかかる。本人は否認するが逮捕される。盗まれた叔父が引き取っている若い女性も青年の無罪を信じる。

しかし金庫内の指紋が甥のものとは確かなので、ほとんど有罪は決まったように見える。
ソーンダイク博士は甥を信じ、この事件に取り組む。しかし博士が参加すると、彼の身の上に殺人未遂かと思われる災難が降りかかる。真相を暴かれることを恐れた犯人の仕業らしい。
裁判となる。ソーンダイク博士は指紋のトリックを見破り、容疑者の青年を救う。

いかにして偽指紋をつくったか、という謎解きが中心の話である。世界名作探偵文庫は冒険小説の類が多いが、これはトリック中心の推理小説である。
真犯人に関しては話の途中からそれらしい者が浮かび上がり、最後に意外な(といっても推理小説の定石だが)犯人が明らかにされる、と思っていたらその者が犯人で終わりだった。拍子抜けした。意表をつかれたというか。

この作品、原題も発表年も不明だが、フリーマンは20世紀初頭に活躍した。当時は指紋が決定的な証拠と思われていたのか。普通の家庭で指紋収集帳を持っていて、家族等の指紋を集めている。これが事件に影響する。
謎解きより指紋が当時そんなに身近なものだったか、と思ってしまい、これが本作の一番の収穫だった。

2017年12月25日月曜日

フレッチャー『ダイヤモンド事件』南洋一郎文、ポプラ社 昭和38年



 「世界名作探偵文庫」の画像検索結果
世界名作探偵文庫の一冊。
骨董屋にある黒い小箱を水夫あがりの男が見つける。仲間のインド人も捜しているようだ。その古物商を殺して小箱を手に入れる。この箱の中にダイヤの首飾りが入っていたからだ。
このダイヤを手に入れた者が次々と殺されていく、という話である。

水夫はインド人を殺す。脱走した囚人に出くわす。彼も元は仲間で、自分の物と思っているダイヤを取り戻すため水夫を殺す。追手の看守たちに囚人は銃殺される。しかしその看守のうち二人がダイヤを発見する。奪い合いで相手を殺した看守は逃げ出す。知り合いに毒殺される。死体を溶鉱炉へ投げ入れ処分しようとしたが、自らも誤って落ちる。

彼の遺産を相続した女はダイヤを発見する。弁護士に相談している際、その不良青年の息子が立ち聞き、盗もうとする。仲間と相談し、女の後を追う。ダブリンに行く。悪党の二人は牧師に化け、女に親切そうに近づく。ホテルに滞在中薬を飲ませ、ダイヤを盗む。しかも悪党の一人が持ち逃げし、不良青年の方は捕まる。警察の指示で不良青年は悪党を捜す。しかし悪党とつるむ酒場の亭主により青年は捕まる。悪党により銃殺される。しかしその悪党も亭主の企みで地下室に閉じ込められる。悪党が餓死してから亭主はダイヤを盗み、田舎へ移る。

そこで善良な市民となって人々から尊敬されるまでになる。何年か後刑事がやって来る。もはやこれまでと思った彼は告白し、残りのダイヤを返して自死する。
ようやくあの相続した女に戻ったと思われた。しかし警察は真の持ち主がいると言う。それはインドから戻った子爵で女と相愛の仲である。子爵はダイヤを自分の妻に渡す、と結婚申し込みをかねて言う。刑事は呪われたダイヤなど自分なら海へ投げ捨てる、と言うが子爵は悪党だから死んだのだと答える。

呪いで持ち主が次々と死んでいくといった話はよくある。しかしこれだけ多数の者が殺されるのは多くないだろう。