2023年12月31日日曜日

スターリングラード大進撃 ヒトラーの蒼き野望 2015

セルゲイ・ポポフ監督、露、86分。第二次世界大戦中、1942年のロシヤが舞台の護送兵と囚人の友情を扱った映画であり、スターリングラードもヒトラーも全く関係ない滅茶苦茶な邦題である。

若き伝令の中尉はある村を通りかかった時、敵の攻撃を受ける。その場にいた露軍も村人も混乱する。中尉も馬を失い、からがら生き延びた。軍法会議があって他の者の証言で中尉は敵から逃げたとなり、銃殺刑を宣告される。穴のような牢屋に入れられ、入口は融通が利かない兵士が守っている。本部からの確認書が来なければ、処刑できない。そのうちに敵軍がやって来て、守っている兵士は中尉を引上げ、一緒に逃げる。

この後、兵士と囚人である中尉の二人は道連れで本部を目指す。途中で大きな川があって手前で負傷している飛行兵がいると分かる。筏があるが一人しか乗せられない。負傷した兵士を先に渡し、後から泳げない兵士を中尉が筏を押して川を渡る。二人と負傷兵は露軍の行進に出会う。露軍は敵を叩く作戦を立てており、融通が利かない兵士が本部に行く必要があると言ってもここでは攻撃に従えと命令される。二人は独軍の攻撃で手柄をたて、記者から写真もとられる。

中尉は他の者と一緒に銃殺されそうになる。その時兵士が助けに来て間一髪で命を取り留める。中尉は表章ものの功績があるが、兵士はあくまで本部に連れて行く、どうするかは上司の判断は仰ぐと言う。独軍の攻撃があった。これで兵士は瀕死の重傷を負い、死ぬ。中尉は自由になったのだが、やはり一人本部を目指す。行った先で旧友等に会う。自分と死んだ兵士の写真が載っている新聞を見る。

サスペリアpart2(完全版) Profondo rosso 1975

ダリオ・アルジェント監督、伊、126分。映画は誰かが刺し殺している影から始まる。

会議場では超能力を持つ女が講演している。会場にいる一人のポケットに何が入っているか言い当てる。超能力者は邪悪な力を感じ気分が悪くなる。誰か会場に邪念を持った者がいるらしい。その夜、超能力者は何者かに包丁で何度も刺されて死ぬ。その時、建物の外にいた米から来たピアノ奏者の男が刺されているのを外から見上げ、直ちに駆けつける。両側に絵が沢山かかった廊下を走り過ぎて(その中に鏡があり犯人の顔が写っている)、殺された女の元に行く。ピアノ奏者の男が警察の尋問中にジャーナリストの女が現場に来る。男と女は知り合いになり事件の謎を追う。

関係のある著書の作者の女も殺される。古い館を訪れ、壁の中に殺人の絵があるのを見つける。また殺人の絵が学校にあると聞き、そこに男が行くと友人の男がいて銃を突きつける。この男が犯人だったのか。その時、警察がやって来て男は殺されずに済み、犯人と目される男は逃げるがトラックに身体が引きずられ、最後は頭を他の車に轢き潰される。一件落着かと思ったが、死んだ男は最初の犯罪があった時、男と一緒だったから犯人の筈はない。犯人は廊下の鏡に写っていた死んだ男の母親だった。その母親が現れ、男と格闘し首飾りがエレベーターに巻き込まれ、首飾りの輪によって女の首は斬りおとされる。

2023年12月30日土曜日

ゴースト・ドッグ Ghost dog: the way of samurai 1999

ジム・ジャームッシュ監督、米、115分。主人公は黒人の殺し屋。『葉隠』に傾倒し、映画中何度も『葉隠』の文章が出て朗読される。

ボスの娘を誘惑した男を仕事で殺す。ところがその殺した男がマフィアの身内であったため、殺し屋を消せと殺し屋を直接雇っている男に命令が下る。殺し屋は昔、その男に助けられたため恩義を感じ、武士が主君に仕えるように従っていた。男は殺し屋に殺せと命令が出ていると教える。殺し屋は公園で少女と仲良くなる。またそこでアイスクリームを売っているフランス語しか喋らない男とも友達である。殺し屋を殺すようマフィアは人を差し向けるが、殺し屋は殺されない。また自分を昔助けた直接のボスにも殺しの命令が下っていたので、自分から撃って怪我をさせ自分の仲間でないとマフィアに知らせていた。殺し屋はマフィアの連中をボスも含め皆、殺すが、最後には直接のボスから撃たれて死ぬ。

2023年12月27日水曜日

Mr. ノーバディ Nobody 2021

イリヤ・ナイシュラー監督、米、92分。主人公は工場勤めの家庭の夫。決まり切った仕事を繰り返す毎日を送っていた。

ある夜、家に二人組の強盗が入ってくる。金を出せと言われるが、カード決済で現金は持っていないと答えると腕時計を寄こせと言われ、渡す。息子が賊に飛びかかり格闘になるが賊は逃げる。息子はあまり抵抗しなかった父親に文句をいう。主人公の男は賊を捜し出す。賊は夫婦と分かり、男は脅し時計を取り返すが、赤ん坊をいるのを見て去る。

バスで帰宅中、むしゃくしゃしていた。そのバスにチンピラどもが数人入り込んできて乗っている女を脅す。主人公はチンピラどもに格闘を挑み半死半生の目に会わす。そのうち一人がロシヤ・マフィアのボスの弟で、死にかけた弟やその仲間を見て誰がこんな目に会わせたとボスは聞く。相手を突き止めたマフィアが男の家に襲撃団を送り込む。男は妻子を地下室に入れ、自分は襲撃した連中を凡て倒す。相手がロシヤ・マフィアと分かったので、マフィアの資金管理所に行き、資金を凡て燃やす。その後男はマフィアのボスに会いに行き、ボスや手下たちと激しく闘い殲滅させる。男の父親と友人も男に加勢した。

花の恋人たち 昭和43年

斎藤武市監督、日活、92分。吉永小百合が主演で他に十朱幸代、和泉雅子、山本陽子ほか人気女優が出演。

医師の国家試験を目指す女のインターンたちである。試験勉強だけでなく、吉永と十朱はライバルで学長賞という賞金が出る優秀賞を受賞したく頑張っている。医師役で浜田光夫が出ており、吉永や十朱は惹かれている。吉永の母が奈良岡朋子で田舎で吉永を苦労して育てたという設定。仲間のうち一人は結婚し、また山本は結婚したい相手がいるものの親が許さない。山本の弟役を舟木一夫が演じている。

医師試験は合格するが、学長賞は十朱が得る。知った吉永は母親が期待していただけに意気消沈する。田舎から電報が来て母親が病気で倒れたと。吉永は駆けつけ、そのまま母の看護で田舎にいようとした。母親は長くもたないらしい。母親から学長賞はどうなったときかれ、吉永は受賞したと言って喜こばす。その時、仲間や浜田が見舞いに来る。吉永が受賞したと言っていたと聞き、十朱は自分がもらった賞金を母親に手渡す。

2023年12月26日火曜日

夕陽に向って走れ tell them Willie boy is here 1969

エイブラハム・ポロンスキー監督、米、98分、ロバート・レッドフォード主演。20世紀の初めにカリフォルニアで実際に起きた事件を基にした映画。

インディアンの青年は好きな女がいて故郷に帰ってくる。娘(キャサリン・ロス)の両親は結婚を認めない。インディアンに対する白人の偏見は強く、嫌味を言われて青年は相手に歯向かい、問題を起こす。更に夜中に好きな女と逢引していた。それを見つかり咄嗟に相手を撃ち殺してしまう。

これで青年はお尋ね者になり、慕う女と逃げる。保安官をしているレッドフォードは他の者と共に追う。レッドフォードには大統領が地域に来るので、その護衛の仕事があって捜索隊から抜ける。レッドフォードには医者をしている好きな女がいて、戻ってから歓迎会で会っていた。その間、インディアンの青年は岩の上から捜索隊を銃撃し、一人を殺してしまう。レッドフォードには聞いてすぐさま捜索に戻る。インディアンの青年は一緒の女と言い合いをしていた。レッドフォードは撃ち殺されて死体となった女を見つける。自殺か殺されたか分からない。レッドフォードはインディアンを追う。岩山の対決となりインディアンを殺す。捜索隊に死体を荼毘にふさせる。後から来た男はなぜ焼いたと怒るが、レッドフォードは見世物ではないとそっけなく答える。

2023年12月25日月曜日

美達大和『人を殺すとはどういうことか』新潮文庫 2011

著者は長期刑務所に収容されている無期懲役囚である。二人殺めた。著者の入っている刑務所は重罪犯ばかり集めている。

この本ではまず自分の生い立ちを述べ、次に犯した殺人について書いてある。自己中で暴力的な父親に育てられ、反省したことなどない、絶対的な自信を持つ人間となった。自分の尺度、それのみが正常であり正義であり背く者は容赦なく殺した。二件の殺人ともそうだった。逡巡などすればそれこそ悪であり、義務を果たすように殺人をした。あまりに冷静に殺人をするので、犯罪の協力者が自分も殺されるのではないかと怯えたほどである。裁判になって被害者の肉親から、初めて自分以外のものの考え方、価値観があると知り仰天したと書いてある。この著者のような考えが普通だったら今の何十倍どころか何百倍も殺人が起きているだろう。

本の後半では刑務所で会った殺人犯の実際が書いてある。刑務所とは犯罪者にとって楽園であり(確かに健康的この上ない生活を送る、送らざるを得ない。食事はまずくとも健康食の極みである)、出たら今度は捕まらないよう、その知識を得る。被害者に対する罪悪感などなく、自分こそ被害者だと思っている。あんなところにいたから悪い、殺したせいで自分は刑務所に入れられていると殺した相手を恨むばかりである。改悛の情を見せるのは刑を軽くするためである。書いている中には人間として尊敬に値するという人物も出てくるが、例外中の例外であるからこそ心に残ったのだろう。

以前、やはり刑務所暮らしをした文を読んで、書いている人もそこに出てくる服役者も人間としてかなり異常だと思った。今回はまさに重罪犯罪者がいかに通常からかけ離れているかが分かる。理解の外にある。解説の最後に「人を殺すとはどういうことか、本書を読んでも闇のように不可解だ」と書いてあるが、当たり前だ。なぜ犯人から直接聞けば犯罪が納得できる、理由が分かると思っているのか。昔、連続殺人犯を描いた映画があって、その評も「この映画でも犯人の心の闇は分からない」と書いてあったが、そのように書けば恰好がつくと思っているのか。分からないのが当たり前である。ともかくこの本は司法関係者はもちろん、犯罪の更生が可能だと思っている人に読んでもらいたい。

コーヒー&シガレッツ Coffee and Cigarettes 2003

ジム・ジャームッシュ監督、米、97分、白黒映画。11の挿話から成るオムニバス映画。コーヒーと煙草をのむさまが出てくる。

二人の会話が多く、とりとめのない話をする。出ている俳優は実名を使っている。日本人として興味深く感じたのは老人二人が話している。そこへ片方の息子が来る。豆菓子を食っている。中国製かと聞くと否定し、両目を吊り上げる。日本かきくと頷く。吊り目はアジア人一般かと思ったら、日本人を指すらしい。

2023年12月23日土曜日

亀山郁夫『ドストエフスキー父殺しの文学』(上下)NHK出版 2004

現代ではドストエフスキーの第一人者と言われている著者がドストエフスキーの翻訳を始める前に出版したドストエフスキー論である。

ドストエフスキーの著作を初期の作品からテキスト、事件、講義などに分け、特に講義の部分で著者の作品解釈が書いてある。著名にあるように父殺しという観点から、また使嗾(そそのかし)という観点からドストエフスキーの諸作品を論じる。更に読んでいて目につくのはロシヤ正教の分離派(改革以前の旧習派)中の一派である鞭身派、去勢派といった宗派について説明があり、小説の誰それは鞭身派だとか去勢派とある。正直なところ、そのように分類されても理解が進むという感じはしない。翻訳で騒がれるようになる前のドストエフスキー論であり、著者の論考では一番読んでみるといい著作に思えた。

2023年12月22日金曜日

ロシアン・ルーレット 13 2010

ゲラ・バブルアニ監督、米、97分。主人公の若い男は父が入院し、金がいる。たまたま仕事で訪れた家で立ち聞きし、大金が入る仕事があるらしい。その男は自殺し、持っていた手紙から大金が入る場所へ行く。

指示通り行くとそこは郊外の館で多くの男たちが集まっている。仕事とはロシアン・ルーレットへの参加だった。参加する者毎にパトロンがいるのだが、別の男がやって来たので驚く。主人公は男は自殺したと述べ、大金を期待して自分が代わりになる。主人公の番号は13だった。弾を込めた銃で輪になった自分の前の男の頭に銃を突きつける。合図と共に引き金を引く。回数が上がるにつれ、込める銃弾の数は増えていく。最後に二人で向かい合い、相手の額に銃を突きつける。

主人公は勝利した。大金を入手し館を出る。警察から駅で尋問される。その前に大金の入ったバッグをごみ箱に入れていた。警察から釈放され戻るとごみ箱は始末されていた。ごみの集積所に行って見つける。主人公は家族に大金を郵送する。ジェイソン・ステイサムがつけていた。ステイサムはパトロンで自分の兄がゲームに参加していたのだが、殺される。ステイサムは主人公を列車の中で刺しバッグを奪って逃げる。バッグには店で買ったぬいぐるみしか入っていなかったのだが。

2023年12月21日木曜日

穴 The hole 2001

ニック・ハム監督、英、102分。高校の四人の生徒が穴の中の密室に入り出られなくなる話。映画は主人公の少女(ソーラ・バーチ)が泣き叫んで学校に戻ってくるところから始まる。他の生徒は遭難したらしい。バーチに警察は事情を聞く。精神が安定していないようだが、次第に事情を語る。

過去に戻る。バーチには憧れる男子がいた。しかし自分を振り向いてくれない。仲良しの女子(キーラ・ナイトレイ)と共に男子二人(うち一人が憧れの男)を誘い、地下の秘密の隠れ家のような施設に入る。初めは面白がっていたが、数日後、蓋が開かなくなり外に出られなくなったと分かる。これで四人とも恐慌状態になる。ナイトレイは病気になり死ぬ。男の一人が、残り少ない飲料を飲もうとしたため、もう一人の男に叩きつけられ死ぬ。バーチは憧れの男と二人きりになり、自分が鍵で閉めた蓋を開け、外に出ようと言い出す。驚いた男が怒って螺旋階段を上ってくるが、階段がはずれ男は落ちて死ぬ。

バーチは外に出て映画の初めの部分になり助けを求めたわけである。聴取で別の男子生徒の企みだと告げ、その生徒は捕まる。証拠不十分で警察から釈放され、バーチになじりに来る。急流の橋でバーチはその生徒を突き落として溺死させ、その生徒の仕業と見せかける。

2023年12月20日水曜日

エンジェル Angel 1984

ロバート・ヴィンセント・オニール監督、米、93分。主人公の女子高生はエンジェルという名で街娼をしている。

娼婦ばかり狙う殺人犯がいた。エンジェルの娼婦の友人が何人も殺され、エンジェルは復讐すべく銃を入手して殺人犯に立ち向かうつもりだった。エンジェルは高校では優等生として通っていた。堅い女でとおっていて男子生徒の誘惑もはねつけていた。

エンジェルに振られた男たちが街でエンジェルを見つける。街娼の恰好だった。無理やり車に乗せ乱暴するつもりだった。エンジェルが銃をぶっ放すので驚き逃げる。生徒は学校の先生にエンジェルが娼婦をしていると告げる。本気にしなかったがエンジェルのロッカーを開け証拠を調べる。エンジェルに理解を示す刑事がいた。その刑事にエンジェルは素性を暴かれる。エンジェルの父親は昔去り、母親も数年前去った。学費を稼ぐため街娼をしていたのだと。

エンジェルの友人がある男を客として連れ去り、殺された。その男を面通しする。候補の中で最後に犯人が分かり指摘すると警官の銃を奪い、警察署で発砲し逃げる。犯人はエンジェルを標的にする。再度エンジェルの友人が殺され、エンジェルは銃を持って追いかける。追跡し銃の撃ち合いの結果、エンジェルの男の友人に助けられ犯人は殺される。

2023年12月19日火曜日

ゴジラ-1.0 令和5年

山崎貴監督、東宝、125分。終戦末期に大戸島にある飛行場に特攻しそこなった主人公の男のゼロ戦が着陸する。整備兵はどこも飛行機は悪くないという。そこにゴジラが上陸、兵士たちを次々と殺していく。男はやはりゼロ戦から攻撃できずゴジラになすがままにしておく。帰郷する。

東京の焼跡で赤ん坊を連れた女と出会う。赤ん坊も死ぬ女から女が預かったものだった。居座りのように女と赤ん坊は男の家に居着く。男が仕事を捜して来る。戦時中の魚雷を掃蕩するため木製の船に乗り込み銃撃で爆破させる。知り合った男たちと仲良くなる。船にいる時、ゴジラを発見する。大型戦闘艦も簡単にやられる。ゴジラは銀座に上陸する。破壊し尽くす中、女を助けに男は行くが、自分は助かるが女がゴジラに吹き飛ばされる。

ゴジラを倒す方法を練る。戦後日本に軍備はなく米軍もソ連を警戒し軍事行動はとれない。戦時中開発して終戦になったため出番がなかった震電を動かせるようにしてゴジラに立ち向かいたい。そのため主人公は大戸島の整備兵を捜して直させる。またゴジラの身体の周りをフロンガスの泡で包み、海底に沈める計画を立てる。複数の駆逐艦を使いゴジラを沈めるがゴジラは死なない。死ななければ急激に海底から上昇させ殺すつもりだった。しかしそれでも生きている。その時主人公の乗る震電がゴジラの口に突っ込み頭を爆破させる。さしものゴジラもこれで沈んだ。港に帰った主人公は女が生きて病院にいると聞き、駆けつけ再会する。その頃ゴジラは海底で再生しようとしていた。

2023年12月16日土曜日

アーサー・ヘイリー『殺人課刑事』 Detective 1997

主人公はマイアミ警察の部長刑事。かつて神父だった。自分の捕まえた死刑囚から死刑の前に会いたいという連絡が来る。家族との予定があったが、やむなく死刑が行なわれる刑務所に向かう。死刑囚は連続殺人犯であった。

小説は過去に遡り、殺人事件とそれを捜査するマイアミ警察の話になる。連続して老夫婦が殺害される事件が起きていた。しかも殺し方が決まっており連続殺人犯であろうと思われた。更に現場に暗示するものを残しておく。神父だった部長刑事はそれがヨハネ黙示録から来ていると分かる。更に警察委員の夫妻が殺された。実はその軽擦委員の娘は警察に勤めていた。過去にその娘である警察官と部長刑事は関係があった。部長刑事の方から関係を打ち切ると相手は激怒した。相手の女は警察の中で昇進していく。部長刑事の上司となった。部長刑事を昇進させまいと女はあれこれ手を打つ。警察委員夫妻の殺しはこれまでと違っていた。それを部長刑事は訝しく思った。更に連続殺人は続き、到頭犯人を捕まえた。その犯人が死刑になる。部長刑事は死刑囚との最後の対談である事実を告げられる。死刑囚は殺人を認めたが、警察委員夫婦の殺人は自分がやったのでないと言うのである。代わりに別の知らなかった殺人を知らされる。死刑が執行された。部長刑事はマイアミ警察に戻り、上司に死刑囚が言った殺人を報告する。実際知らなかった殺人の犯人が死刑囚だったと分かる。そうなると警察委員夫婦の殺害は誰がしたのか。

別の事件が持ち上がる。富豪の家の婿が殺された。駆けつけると被害者の妻が家を仕切っており、部長刑事は殺人でなく自殺だったと突き止める。見栄で自殺でなく殺人にしたと分かった。この後、警察委員夫婦の殺人について真相が明かされる。部長刑事と関係のあった、今では遥か上の地位についている女が関係しており、過去の真相が明らかにされていく。(永井淳訳、新潮文庫、平成13年)

あなたになら言える秘密のこと The secret life of words 2005

イザベル・コイシェ監督、西、115分。ある工場で働く若い女。無口で他人との接触がほとんどない。支配人から休暇をとったらどうだと勧められる。元々その気はなかったが、言われたので田舎に行く。

食堂にいる時、近くの席にいる男の電話が聞こえてくる。火傷した怪我人がいる。看護婦が必要だと言っている。電話の相手からよい返事を貰えなかったようである。女は声をかける。自分は看護婦をしていた、手伝おうかと。男に連れられ、海底油田の掘削施設に行く。怪我した男は火傷だけでなく、目も当分見えない。医者が近日中に来る予定なのでそれまで面倒みることになる。男は色々と女に声をかける。女は言葉少なに返事をするだけである。女が怪我人を世話していくうちに、また掘削機構にいる他の男たちとの接触で、女は次第に次第に心を開いていくようになる。遂に女は暗い過去を話し出す。ボスニア紛争の際、女友達と被った災難。乱暴された挙句傷つけられ、友達が死んでいくのを見ていたと。怪我人の男はヘリコプターで運ばれていく。後に女も去る。男は治ってから女を捜す。見つけ、消極的な女に一緒になってくれるよう頼む。

ザナドゥ Xanadu 1980

ロバート・グリーンウォルド監督、米、96分。オリヴィア・ニュートン=ジョン主演のミュージカル映画。

画家志望の若い男は生活のため商業絵画を描いている。ある日、実はムーサイの一人であるニュートン=ジョンに会う。すぐにいなくなってしまう。男はクラリネットを吹いている初老の男(ジーン・ケリー)に会う。金持ちで昔は音楽をやっていたが、好きな女と別れ音楽はよしてしまった。男がジャケットとして渡された絵はあのニュートン=ジョンが写っていた。その絵の場所に行く。寂れた施設だったが、ここを音楽の劇場として再開しようとケリーに言われる。ニュートン=ジョンに会うが名だけ告げられ、また去ってしまう。ムーサなので地上にいつまでもいられない。両親に許可をもらおうとするがゼウスは許さない。母親は理解を示す。劇場はザナドゥと名付けられ、開館される。初演として様々な踊りや歌が披露され、やがてあのニュートン=ジョンもやって来てみんなとショーに加わる。

ゾラの生涯 The life of Emile Zola 1937

ウィリアム・ディターレ監督、米、116分。文豪ゾラを主人公とした映画。ただし前半はゾラの生涯と作品を元に自由に脚色した作りで、ゾラの伝記映画とは言えない。後半というか中心はドレフュス事件への関わりである。ゾラがドレフュスを弁護したため、イギリスに亡命せざるを得なくなったなどはそのままだが、ドレフュスが冤罪に問われた原因である。

これはドレフュスがユダヤ人であったため、当時の欧州全体で普通であったユダヤ人蔑視から来ているのは周知であろう。ところが映画では陰謀に陥れられたというだけで、ユダヤ人という言葉は出てこない。ドイツで作られた映画なら出てこなくて不思議ではないが、アメリカの映画なのである。ナチスが戦争を始める少し前の映画で、ゾラが演説する自由や人権についての擁護が中心の思想なのであろうが、ユダヤ人という言葉が出てこないのは良く理解できない。

筒井康隆『大いなる助走』 昭和52年~53年

文学賞や同人雑誌を徹底的に戯画化した小説。地方に住む主人公は大企業勤めであるが、小説家志望で地元の同人雑誌に作品を載せる。先輩からの示唆で自分の企業の実態を暴く小説を書く。同人で他の小説を貶すばかリの連中からは良く言われない。

それが中央の文芸雑誌に目が留まり、その雑誌に転載される。同人らは嫉妬、ひがみで怒り狂う。直木賞をもじった賞の候補となる。どうしたら受賞できるか。事情通から選考委員の好みを聞き、どう対応すれば良いか伝授される。金が困っている者には金を、女好きには女を世話し、男色家の委員には自分の身体を差し出す。

ところが選考の場は委員たちの醜行で、最終的には別の作家が受賞する。これを聞いた主人公は怒り狂い、委員たちの殺害を決意する。順番に殺していく。数人殺した後、自分も事故で死ぬ。故郷の同人の一人は未成年の女子の同人を妊娠させており、女子が自殺する。その遺書から同人の犯罪が分かり警察が来て逮捕される。

2023年12月15日金曜日

ジュラシックSWAT 対恐竜特殊部隊 Trassic hunt 2021

ジェラルド・ラシオナート監督、米、86分。恐竜が二匹、輸送途中に逃げ出してしまう。離れていない所に住宅地域がある。その恐竜を退治するため、SWAT隊(私兵部隊?)がやって来る。恐竜と工場内での対決である。

実はこの恐竜は人造物で、この恐竜を兵器として外国に売り込むためわざと逃げさせ、人間たちと闘わせたのである。恐竜が武器として使えるなら高く売れるだろうと。SWATは犠牲を出しながら恐竜を倒していく。事情を知ったSWATは怒る。恐竜がやられると外国からの買い手は取り下げてしまう。ミサイルが発射され、SWAT等のいる建物を破壊するはずだったが、逆に恐竜製造のボスの陣取るビルを破壊する。アサイラム映画である。そう思えば観れないこともない。

エスター Orphan 2009

ジャウム・コレット=セラ監督、米、123分。ある家庭に引き取られた孤児エスターが引き起こす恐怖映画。ただ恐い女の子だけの話ではない。恐い女の子はどこにでもいる。これは最後にからくりが明かされるという映画でもある。謎が明される映画である。

最近流産を経験した夫婦は孤児のエスターを養子にとる。実子として男の子と幼い難聴の女の子がいる。義兄の男の子はエスターを好きになれなかったが、幼い女の子は慕う。エスターの行動にはやや訝しいところがある。夫婦はエスターがいた孤児院のシスターに話を聞こうとする。出自に不明な点があるのでそれは帰ってから調べようとして、帰り道にエスターに殺される。車を転倒させ石で叩き殺すのである。幼い女の子には黙っていろと命令する。義兄が秘密を探ろうとすると間一髪で焼け殺されそうになる。

母親はエスターが普通でないと思う。父親はエスターに何も不信を抱かない。母親はエスターが実は病気で子供に見えるだけで大人であり、過去には犯罪者であったと突き止める。その頃、エスターは大人の女風に父親を誘惑した。驚いた父親が手向かうと殺してしまう。母親は家に着きエスターと格闘し、氷の張った池で蹴落とす。

ジキル博士とハイド氏 Strange case of Dr Jekyll and Mr Hyde 1886

ロバート・ルイス・スティーヴンソンが書いたあまりにも有名な小説。おそらく小説上の架空人物ではシャーロック・ホームズと並んでとりわけ有名な名であろう。小説など読んでいなくても誰でも知っている。二重人格の代名詞としても使われる。

話はジキル博士の友人という弁護士が目撃した事件を友人に話すところから始まる。醜悪な感じを与える男が少女にぶつかり、少女を踏みつけて去って行く。驚いて男を捕まえ、損害倍書を請求すると家から持ってきた小切手にはジキル博士の名がある。驚く弁護士。ジキル博士が弁護士に託した遺書には自分の財産をハイド氏に譲るとある。これを見てジキル博士がハイド氏に恐喝されているのではないかと忖度する。ジキル博士にハイド氏の件を尋ねても答えはない。その後、ハイド氏は殺人事件まで起こすようになる。お尋ね者になったハイド氏は最後に死体で見つかる。遺書によって真相が明らかになった。

林健太郎『昭和史と私』 平成30年

歴史学者林健太郎の自伝であるが、並行して自分がその中で成長した昭和の出来事を書いている。自伝に歴史を足している。ランケの自伝がそうなっているらしくそれを目指したという。大正初めの生まれだが、物心つくようになったのが昭和くらいからなので、昭和史となっている。こういう有名人の自伝では初めに自分の家がいかに由緒ある古い家系かを書き、幼年時代の腕白ぶりなどを書く例が多いが、本書はそうでない。

昭和初期は歴史にあるように次々と重大事件が起こった。それらを同時代の目で著述している。長じて学問ではマルクス主義を信奉するようになった。戦前の人文社会系の学者はマルクス主義にはまった者が多いと良く書いてあるが、林も同様だった。戦後になって、それまでソ連を見てきてマルクス主義からは離れるようになった。

また著者は東大の教員であったため、学者間の、学内の事情が良く書いてある。これらは部外者にとって興味ある記述になる。更に戦後の平和運動の主導者として清水幾太郎の名を挙げている。清水は60年安保の時まで進歩的文化人とは知っていたが、特に運動の面ではとりわけ大きい存在とはこれも知らされた。学園闘争の内部の実際も当事者だから詳細に書いている。一緒に担当した文学部の評議員として岩崎武雄、堀米庸三の名が挙がっている。国会議員にもなり審議時間が短いと書いてあるが、これも素直な意見であろう。国会は政争の場であり、立法の機能はそれもやる位のものだからである。

2023年12月1日金曜日

海底大戦争 昭和41年

佐藤肇監督、東映、ラム・フィルム、83分、千葉真一主演の空想科学映画。登場人物のほとんどは外人で千葉の他には室田日出男が出ている。

米海軍の潜水艦が実験中、謎の人影らしき物を見つける。記者たちが見守る中、それがどういう物か不明であった。記者の千葉は金髪の若い女記者と共にその謎を探るべく海中に潜る。女が半魚人らしき物に遭遇し、驚き写真を撮るが写真機は海底に落としてしまう。半魚人について米海軍の軍人に言っても信用してもらえない。

後に千葉と女はまた海に行き今度は謎の海中の洞窟に入るが、そこで半魚人たちにまた会う。二人とも捉えられる。半魚人は実は科学者が人間を改造して作った者だった。水陸両用で陸の国を攻めるのに使える。人間を半魚人にする過程を見せられる。千葉と女も半魚人にさせられそうになる。相手側と対決しやっつけ、脱出をする。半分半魚人にさせられたかと思ったが学者の治療で元の身体に戻った。