2022年6月30日木曜日

やくざ戦争 日本の首領 昭和52年

中島貞夫監督、東映、133分。山口組の東日本進出をモデルとした映画。全体のボスは佐分利信が演じ、その下、全体のとりまとめ役は鶴田浩二。更に松方弘樹、千葉真一、成田三樹夫その他やくざ俳優が勢揃い。相手方のやくざで菅原文太が出ている。

話の進行は込み入っていてあまり分かりやすいものではない。佐分利の家庭の話も一つの大きな筋。長女が結婚する、それに対する支障。また次女は問題を次々と起こす。

映画の後半で千葉真一が自分のボス、鶴田が襲われた仕返しをして警察に捕まる。佐分利は千葉を切れと鶴田に命令する。抵抗する鶴田、しかし千葉はその事情を知り、留置場で自殺する。鶴田は解散させてくれと佐分利に頼む。しかし佐分利は拒否する。持病に加え事情で鶴田はいつ死ぬか、となる。鶴田は遺書で組の解散を命じようとするがその死によって果たされなかった。

ミスト The mist 2007

フランク・ダラボン監督、米、125分、スティーヴン・キング原作を基にした恐怖映画。

ある日、スーパーにやってきた主人公とその息子。スーパーの周りに濃霧が発生する。ただ不気味だけでなく、外に出た連中が不明になる。また様子を見に倉庫の扉から濃霧の中に出た若い男は、霧の中の怪物にやられる。扉の下から触手のようなものが入ってくる。何とか切り落として遮る。
スーパーに閉じ込められた男たちの中でもう外に出ようと主張する者たちが出てくる。主人公が止めても無駄で、出た連中は怪物にやられ、下半身だけが紐で引き戻される。狂信的な女が、罰が下ったのだとみんなを恐怖に陥れる。
主人公とその同調者たちはこのスーパーから逃げる計画をたてる。駐車してあった車に何とかして乗りこむ。そこから濃霧の中を走っていく。車が事故で止まり怪物が襲ってくるなら、ここで自殺すべきか。息子の頭に銃を突きつけた主人公は霧の中から軍隊の戦車がやって来るのを見つける。

2022年6月28日火曜日

警視庁物語 19号埋立地 昭和37年

島津昇一監督、東映、66分、白黒映画。

東京湾の埋立地。ショベルカーが土をすくい上げていると人間の手が見えた。早速警察がやってきて現場検証が始まる。被害者は男、体格はいい、歯並びが悪い。特に手に数珠を持っていた。警察で被害者の身長を、1m・・・70cm、と言う。メートル法になっている。このシリーズ初期の頃は5尺何寸と言っていた。高度成長期で急速に「近代化(=西洋化)」が進んでいたとの証左である。当時、170cmは男でも大きい方。今なら175cm以上の感覚。

明くる日から近所の聞き込み、また数珠の種類を調べる。仏具屋で数珠はある新興宗教のものと分かる。高度成長期は新興宗教がその信者を伸ばした時期でもある。田舎から都会にやって来た人々は、田舎の封建的呪縛は逃れたが、人との繋がりの希薄さに不安になり、新興宗教に入った者は多い。その新興宗教を調べたが分からない。聞き込みでも事情はあまり判明しない。そのうち被害者と思われる前科者が浮かび上がる。その前科者には以前妻がいて別れた。その妻の行方を追う。その元妻は再婚していたと分かった。この被害者の元妻と今の夫を警察に連れてくる。同じ時に警察の別々の部屋で訊問する。被害者によって人生を今までも、更にこれからも滅茶苦茶にされた(される)弱者の悲劇が明らかにされる。

高度成長期のシリーズの一作である本映画も昭和30年代後半に入っているが、下町は今の感覚でいうと貧民窟のように見える。一斉に豊かになったわけではないし、貧しい地域が舞台なのでその当時の風景なのである。

2022年6月27日月曜日

佐藤優『ドストエフスキー入門』新潮文庫 令和3年

評論家の佐藤優がドストエフスキーの後期5長編を論じた書である。書名にはドストエフスキー入門とあるが、入門書ではない。難しい内容だとか難解な書き方をしているという意味では全くない。本書は著者が行なった講義の活字化で、聴衆にと話しかける、ですます体で個々の文は容易に理解であきる。

入門であれば夫々の長篇の概要とか狙いを書くだろう。それがドストエフスキー自身の生涯については、はじめにの所で説明しているものの、長篇そのものは既に読んであると前提しての解説である。どのあたりが重要であるか、また漫然と読んでいても現代日本人には意味がとれないところの説明である。特にキリスト教に関する部分である。
よくドストエフスキー理解にはキリスト教を知らないといけないとは書いてあるが、ドストエフスキーのキリスト教要素をどう理解すればよいか分からない。それに対し本書はその疑問に答える例である。著者は神学が専門でロシアに78か月暮らしたとある。適当な人材であろう。

2022年6月25日土曜日

警視庁物語 12人の刑事 昭和36年

村山新治監督、ニュー東映、88分、白黒映画。

宮城県の松島のホテルで女の死体が見つかる。連れの男が犯人らしいが逃走して不明。遺留品は石鹸の箱など。上野から来たらしく東京の人間か。宮城県警の刑事二人が東京に飛ぶ。
一人は石鹸を配った千葉の旅館にまず行く。石鹸を配った幾つかの団体客を聞き、そこからあたってみる。石鹸を配った先で不明な客があった。それは団体客でなく特定の客だった。その客を捜す。それで被害者の女が判明した。事件前に大金を下していた。
被害者の恋人は釘師で、名古屋の実家で被害者との婚姻届けを出していた。刑事は名古屋に飛ぶ。そこでは見つからず、東京に戻ったらしい。パチンコ屋で見つける。ところが男は真犯人ではなく、被害者には恋人がいたと言う。
その恋人はトラックの運転手で最近トラックを購入したと判明する。トラックで東京に戻ってくる予定である。ニュースでその真犯人の名が流れる。これを聞いて犯人は逃げたらしい。犯人が本当に結婚するつもりでいた女を佐久間良子が演じる。逃げた犯人は佐久間のところに電話をし、お金を持ってきてくれと頼む。張り込んでいた刑事に犯人を自首させるよう行ってくれと頼まれる。新橋駅前の街頭テレビを観ている群衆の中で佐久間は待っていた。犯人が現れる。刑事が飛び出し犯人も逃げようとするが、捕まえられる。
12人の刑事とは警視庁の刑事のほか、宮城の刑事、名古屋の刑事を合わせた登場する刑事の人数である。

警視庁物語 十五才の少女 昭和36年

島津昇一監督、東映、62分、白黒映画。

多摩川沿いで写生をしていた女高生が浮かんでいる女の死体を見つける。鑑識の結果では絞殺、年齢は十代後半の模様。被害者は後に精神病の母親と住んでいる15歳の少女と分かった。生活保護だけでは食っていけないので、売春をしていた。多くの男と関係していた。
最初怪しいと思われた男はシロだった。そのうちに少女の家を担当する福祉事務所の男が立場を利用して少女を好きなようにしていたと判明する。警察署に連れてくる。自分は殺人などしていない。川べりで少女から誘われたと言う。
警察署に自首してきた少年がいた。少女と同級生で、少女が福祉事務所の男と一緒にいて、男が少女を襲おうとしていたので怒鳴って、福祉事務所の男は驚き、逃げていく。少女が好きだった少年は、売春などやめろと言うが少女は絶望し自分なんか生まれてこなかった方が良かったと泣き出す。死にたい少女の願いを聞いて少年は首を絞め、川に死体は落ちる。
このシリーズ中特に暗い内容の映画。

2022年6月21日火曜日

日本の黒幕(フィクサー) 昭和54年

降旗康男監督、東映、131分、佐分利信主演。

黒幕、フィクサーとは児玉誉士夫を指し、これをモデルにした役を佐分利が演じる。児玉と田中角栄の物語を映画にしたもの。もっとも田中角栄役は大した働きを映画の上ではしていない。佐分利が総理にした男が犯罪容疑で逮捕されそうになる。総理は佐分利を切る。それで佐分利が怒るというのが映画の大きな流れである。ロッキード事件をネタにしているわけだが、当時は何と言っても大物総理の田中角栄の逮捕が大騒ぎになり、黒幕児玉も話題にはなったと思うがそれほどだったのか記憶にない。

この映画ではそういった政治の動きと共に、佐分利のお家事情が関心を持って描かれる。娘、松尾嘉代は秘書役の田村正和といい仲になっている。実は二人は異母姉弟で、映画後半でそれが佐分利によって明らかにされる。松尾は驚愕し怒り、父親と対決姿勢をあらわにする。また映画の途中で佐分利を暗殺にきた若い男は取り押さえられるが、佐分利は目をつけ家で養う。この若い男はやけになった松尾を刺し、また逮捕される総理を刺す。田村も佐分利に抗議に来た男に刺され死ぬ。佐分利の怒りの中で映画は終わる。

日本の政治史上有名な事件をモデルにしており、そういった事情で見ると関心を持てるかもしれないが、虚心坦懐に観てそれほど面白い映画だろうかと思ってしまった。

野口嘉則『鏡の法則』総合法令出版 2006年

いわゆる自己啓発本の一種である。表面的に読むと、うまくいっていない家族関係をいかに修復するかの指南のように見える。しかしそういった本ではない。この本には家族関係を修復できたという例が載っている。それはあくまで一つの結果であって、そうならない場合の方が多いだろう。過去と他人はどうにもならないという句がある。過去は変えられないように、他人(自分以外の人)を変えようとしても、まず不可能なのである。

目的は他人を変えることではない。自分の気持ちが落ち着くためにはどうしたらよいかの一つの提案である。理屈では知っている人も多いだろう。過去に実施したという人もいるだろう。他人を変えようとしてでなく、自分を変えるためにやったらどうかという勧めである。

2022年6月19日日曜日

警視庁物語 不在証明 昭和36年

島津昇一監督、東映、62分、白黒映画。

某官庁、夜のビル、守衛が見回りしている。ある部屋でロッカーを開けている男がいる。その部屋に守衛が入り、男を発見するが殴られる。相手の顔を見た守衛は叫ぶ。知っていた顔だったから。この叫びを聞いて男は何度も殴り返し、ついに守衛は意識を失い最終的に死ぬ。

明くる日、警察から第一発見者の女事務員、係長(小沢栄太郎)は聴取される。ロッカー(金庫)が荒らされているが、取られた物はないと答える。犯行時刻は壊れた腕時計から2115分頃と分かる。当夜ビルにいたのは残業していた小沢と部下の二人である。7時台に引け、飲み屋に行ったと言う。そのうち一人の男は恋人とのもつれから、会うため早々に出たいと言いだす。それにはもう一人の部下がついて行く。小沢はタクシーで帰った。後にこれらの証言を確かめていくと嘘が色々あると分かった。一旦は恋人ともめている男の容疑が濃くなるが、結局真犯人が逮捕される。警察から解放されたが、男は恋人とは和解することなく、別れて終わり。

この映画で小沢は係長の分際でありながら、飲み屋の帰りにタクシーを使う。少し考えられない設定である。当時は役人ときたら安月給と決まっていた。今の役人でも東京で飲み屋の帰りにタクシーを使うなど考えにくい。この辺りお金を使い放題だった映画人の感覚で作っているのが良く分かる。

2022年6月18日土曜日

與田準一『五十一番めのザボン』 昭和26年

與田による児童文学。南国のある小学校で新校舎建設のため、庭にあるザボンの木が切られそうになった。議論が起こった。結局、校舎の向きを変え、ザボンの木は半分だけ残して、北側の枝は取りはらわれた。この木になるザボンの実を売ることになった。夫々に番号をつけて、51番までになった。買った者たちから手紙が来た。それがこの小説の中心部分である。そこに書いてある買い手の物語はまさに戦後を感じさせる。例えば外地から戻って来て上の子は外地で亡くした、とか。靴磨きの少年が出てくるが、いつ頃まで日本の都会に普通に見られたのだろうか。昭和30年代半ばくらいまで?題名は51番目のザボンだが、もちろんみんな返事があったわけでなく、一部のみであり、51個のザボンという意味である。

講談社の少年少女日本文学全集第12巻に所収。この本は昭和52年の再刊だが、元は昭和30年代後半に出ており、それが学校の図書室にあったので懐かしく読んだ。装丁は昔の方が布の表紙に真ん中に絵が載っていて(同社の少年少女世界文学全集と似ている)、豪華な感じだった。

2022年6月16日木曜日

ミネソタ無頼 Minnesota Clay 1964

セルジオ・コルブッチ監督、伊仏西、95分、マカロニ・ウェスタン。

主人公は無実の罪で服役し、戸外の採掘場で働かされている。目をひどく痛めていた。隙を見て脱走した。故郷の町に帰る。
義弟が自分の娘を養育していた。娘は、父親は死んだと聞かされており、主人公が父とは知らない。今は保安官をしているかつての知り合いが自分を陥れ、妻も殺したと分かった。メキシコ人の悪党一味が保安官と対立していた。
主人公はメキシコ人頭領の女に案内され、保安官一味をたおさないかと頭領から誘われる。その夜、女に起こされ、頭領は殺そうとしているから逃げろと言われる。弟の家に戻ってきた。頭領は女に騙されて主人公が金を持ち逃げしたと信じ、メキシコ人悪党どもは襲ってくる。
その連中と戦ってやられそうになったが、保安官一味が来てメキシコ人頭領を倒す。あの女の手引きだった。主人公は保安官に捕まる。女は保安官に自分と逃げないかと誘うが、信用できない女と分かっているので相手にしない。女は主人公を逃がす。保安官は女を殺す。
主人公は保安官一味を殺し、最後は保安官もたおす。主人公の無実が証明され、主人公は騎兵隊のところに戻る。

警視庁物語 聞き込み 昭和35年

飯塚増一監督、東映、52分、白黒映画。

警視庁に老婆が訪ねてくる。たまたま捜査主任が見つけ対応する。弟が失踪しており、その不動産が売却されている。しかも売却したのは弟の息子と称する男だが、弟は独身で子供はいない。多摩川で上がった水死体を確認したところ、その失踪した弟であった。
弟の不動産を勝手に売却し殺したものと見られる。聞き込みが始まり、被害者の足取り、関わった不動産屋を調べていく。話の後半で犯人は、前回「血液型の秘密」に出てきたふてぶてしい若い男だと分かる。
その男を捕まえるために刑事の一人が変装し、契約しに自分の会社に行くと称して車に乗せ、車の中で桜田商事、警視庁だと告げ犯人を驚かせて終わり。

2022年6月15日水曜日

警視庁物語 血液型の秘密 昭和35年

飯塚増一監督、東映、56分、白黒映画。

野犬狩りをしている保健所職員が嬰児の死体を発見した。青酸で死んでいる。あざが肩にある。他には手拭が見つかった。被害者を確定すべく、産院や手拭を配布した店に聞き込む。母親と思しき女は分かった。しかし見つからない。
父親のほうもアパートに寄り付かない。女は勤め先の中年所長(東野英治郎)とも関係があったようだ。母親である女の轢死体が見つかった。東野英治郎も、ようやく見つかった父親の若い男も警察で聴取を受ける。
東野は男と結婚するなら今まで使った金を返してもらいたい気でいた。男の方も実際に自分が父親かどうか分からないだろうとふてぶてしい。それなら血液型の検査をしようとなり、医師が来てその場で血液型を調べる。また東野の血液型も調べる。その結果は若い男がやはり父親だった。
死んだ女の手紙が見つかり、それは遺書だった。男とよりを戻したかったが、男はつれなく叶わない。それで幼児を殺し、自分も自殺するとある。男は生まれてこない方がよかった赤ん坊だったと言って去る。犯人を挙げることなく自殺で終了した回。
この年生まれた徳仁天皇の称号にあやかって子供の名を浩と名付けたという説明が出てくる。

2022年6月12日日曜日

警視庁物語 深夜便130号列車 昭和35年

飯塚増一監督、東映、80分、白黒映画、このシリーズでは長篇。

東京の汐留貨物駅に届いたトランクの引き取りがない。開けてみると女の死体だった。身元不明、コンタクトレンズを使っていた。発送元が大阪だったので、数人の刑事が大阪に飛ぶ。
大阪での聞き込みが色々あり大阪府警物語かと思ったが、結局元は東京からの発送と分かった。大阪に着いてから駅の間を回し、また東京向けに発送したという手の込んだやりようであった。
東京で発送した駅、隅田川駅で聞き込み。軽三輪で配達されたというが、最初聞き込んだ業者が嘘を言っていたと分かる。
また被害者についても判明する。三河島在住の化粧品販売員。軽三輪の業者に頼んだ男の住所に行き、そこで犯人と思しき男の名前を知る。故郷が愛知県というので刑事が一人飛ぶ。伊勢湾台風で浸水がまだ引いていない時期。犯人はいない。東京に帰ったか。
犯人の友人から犯人の恋人を聞く。船橋ヘルスセンターの踊り子。警察に連れてくる。犯人と逃げる気でいたらしい。相手が殺人犯だと知り驚く。犯人と待ち合わせ電車で西に行く予定だった。
女がいないので東京に戻ってくるだろう。刑事たちが列車に乗りこむ。この列車が103号。それと思しき若い男が二人いた。東京に着き、一人を抑えたら間違いだった。もう一人である。早朝の駅で捕物帳。犯人を捕まえる。

2022年6月11日土曜日

コントラクト・キラー I hired a contract killer 1990

アキ・カウリスマキ監督、芬蘭・瑞典映画、79分。

主人公はトリュフォー映画でお馴染みのジャン=ピエール・レオが演じる。レオはイギリスの水道局に勤めている。しかし民営化されるというので、組織のリストラを行なう。外国人であるレオは最初に整理の対象となった。やることもなく、自殺を試みる。失敗する。
殺し屋があると聞いてそこへ行き、自分を殺すよう依頼する。
明くる日、レオは花売り娘を知る。その娘を好きになり、相手も好いてくれる。これで死ぬのが嫌になった。しかし殺し屋に襲われる可能性がある。
ごろつき風の男二人の後を追い、店に入ったレオは二人が銃で脅して強盗を働いている現場を見る。誤って銃で主人を殺してしまい、その銃をレオに押し付けてごろつきどもは逃げてしまう。レオはみんなに目撃され新聞に載り、殺人犯扱いになる。レオは花売り娘から去って消える。
後に殺人の真相が分かる。レオの疑いが晴れた。花売り娘はよその店で働いているレオを発見する。新聞を見せ、これで犯罪者でなくなったとレオに告げる。
殺し屋は未だに追ってくる。殺し屋は銃をレオに向ける。しかし殺し屋は不治の病を患っており、銃でレオを撃つと思いきや、自分の胸に向け、自殺する。レオと花売り娘は2人してよその地へ行く。

渡辺努『物価とは何か』講談社選書メチエ 2022

元日銀職員で今は学者の著者による物価についての解説書。専門的な内容でありながら、極めて分かりやすく説明している。かなり高度な水準まで解説がある。非専門家を煙にまくような書き方でなく、誰にでも読めば理解出来るよう説明している。物価については、統計であるから経済学者はこれまで説明や議論をあまりしてこなかった。しかし長年デフレが続き、そこからの脱却が国家的合意になってきていた。これまでの政策の評価のためにも物価についての理解は要請されている。それに答える書である。

著者によれば最新の議論を含めて物価理論全体を述べるのではない。評価しないものは書かず、標準となっていない理論でも重要であれば述べるなど著者の好みが強く表れているという。例えば財政の物価理論については解説があるが、現代貨幣理論などは説明されていない。

2022年6月5日日曜日

警視庁物語 遺留品なし 昭和34年

村山新治監督、東映、66分、白黒映画。

電話交換手がアパートの自室で殺された。朝、現場を調べに刑事たちが来る。絞殺された模様。電気のコードが首に巻いてある。電気スタンドは落ちて割れている。この時ショートしてアパート全体が停電した。そこから犯行時刻が8時過ぎと分かった。
電話交換手の同僚に被害者の交際模様を聞く。地味な人でマネービルに精を出していたとか。それでも同じビルの建設会社社員、また医者で池田某と付き合いがあったと分かる。建設会社の社員を木村功が演じチンピラ風のふてぶてしい態度で警察に対応する。この男は結局シロだった。東都医科大学生理学教室に池田という医師がいる。故郷に帰って留守だと言う。明くる日も帰ってこない。この医者の写真を関係者に見せても断定できないとしか返事が帰ってこない。刑事の一人は医師の故郷に向かう。
また被害者が結婚相手を見つけたのは結婚相談所だと言うので都内の結婚相談所を片っ端から洗う。殿山泰司が経営する相談所で見つけたのは池原といい池田ではなかった。この写真を交換手仲間に見せると一人はこの男だと断定するが、もう一人はあいまいな返事しかしない。その女は後から刑事を追ってきて、その男は最初被害者と付き合っていたが、その後、自分と交際し結婚の約束をしていると言う、
その池原が犯人との確認は他でも得られた。池原が来るはずの喫茶店で刑事たちが張り込んでいる。いつまで経っても現れない。そこで待っている女が池原から連絡がなかったかと店に聞くので、刑事はその女も池原に騙されている一人だろうと尋ねる。ここから池原の住所が分かったので、刑事たちは赴き高飛びの準備をしていた池原を追って捕まえる。捜査本部では事情を聞いていた交換手に帰っていいと言い、真面目な青年が見つかるだろうと捜査主任は慰める。

2022年6月3日金曜日

空港の魔女 昭和34年

佐伯清監督、東映、88分、高倉健、久保菜穂子主演、総天然色映画。

高倉は職員が2人しかいない三流経済紙を主宰する。贋ドルが見つかったとのニュースを見る。担当の警察では容疑者は釈放したと記者たちに言う。外人相手の観光でその際掴まされたのが贋札だった。高倉はこの事件に興味を持ち、釈放された容疑者宅に行くと殺されていた。警察から取り調べを受けるが知り合いの刑事(加藤嘉)によって釈放される。
横浜でタクシーの運転手が外人客から受け取ったドルが贋札と分かった。警察はドル札など受けとるなと言うが横浜のように外人が多い場所ではたまにあるという。しかもその贋札では円に換えてもらえない。絶望する運転手。
高倉は空港で見かけた久保菜穂子に関心を持ち、接近する。久保の仕事は今でいう旅行エージェントである。もちろん一般日本人の海外旅行など夢の時代である。外人相手で利益はかなりあるとのこと。実は久保の勤務する会社自体が贋ドルを売っていた組織だったのである。高倉は友人が外国に行くというので何が価値があるか、それはドル札だというので、久保に円をドル札に替えてもらう。銀行で円から外貨への両替など全くできなかった時代である。これは警察で調べると贋ドル札であった。出所はどこだと警察から問い詰められるが高倉は話さない。
久保が京都、名古屋などに外人を連れて行く旅を高倉は追う。盗み取ったトランクを帰京して開けてみると紙くずだった。久保は高倉が後をつけていたのを知っていたのである。
久保は高倉に相談があるという。それは犯罪、それも殺人をして外国に大量の金と高飛びする計画であった。久保は高倉が自分を好いていると知っていて、話をもちかけ了承するだろうと知って話したのである。高倉は承知する。久保は自分の上司(同じ東映の『警視庁物語』シリーズで捜査の中心で活躍する刑事役をした堀雄二)が飲む酒に毒を盛るよう高倉に指示する。その後、ドルと円の私的大量交換(これも犯罪である)を別の会社の連中と久保、高倉は行なう。贋ドルを払い日本円を入手し、飛行機でブラジルに飛び立つ予定だった。
しかしこの計画は羽田で崩れる。高倉は警察に通報し久保は殺される。実は高倉の妹が贋ドル絡みで留学した際、死んだという事情があった。

2022年6月2日木曜日

警視庁物語 一〇八号車 昭和34年

若林栄二郎、村山新治監督、東映、54分、白黒映画。

三河台の屋敷町を巡回するパトカー108号。盗難被害のあった連絡を聞く。不審な小型トラックが駐車していた。一人の警官がパトカーから降りてトラックに誰何するといきなり走り出した。ドアにしがみつく警官。残りの警官はパトカーで追うが銃声が聞こえた。パトカーは同僚の警官が倒れているのを見つけた。直ちに救急車を呼ぶが死亡した。
この警官殺しを捜査一課は全力を挙げて追う。まずトラックのナンバーは控えていたがそれで持主を調べると既に売っており、売った先も偽名だった。ナンバーは分かっているから過去に何等かの事故や事件、違反を犯していれば記録が残っているはずだ。この過去の膨大な記録を刑事たちは手分けして延々と捜していく。ようやく犯人と思しき男の名や写真が分かった。
一方車を買った男が名義変更で売った店に来るというので張り込む。捕まえた若い男は黙秘権を行使して何も喋らない。しかし相棒の名や自分の本名が分かったので白状する。警官殺しの相方は有楽町のビルに来るはずだと。張り込みして来た犯人を捕まえる。最後に刑事たちは北の丸公園の弥生慰霊堂に合掌に揃って行く。

2022年6月1日水曜日

警視庁物語 顔のない女 昭和34年

村山新治監督、東映、74分、白黒映画。

荒川河川敷で女のバラバラ死体が見つかった。胴体だけ。夜中、上流の橋から何かものを川に投げ入れた男がいて警官が誰何したが車で逃げられた。ナンバーの一部は見えた。
身体の他の部分は荒川の下流か、あるいは分流の隅田川の方に流れたか。ところが橋の上流にある東北線の橋の下で脚が見つかる。もっと上流から投げ入れたのか。橋の上から野犬の死骸を落とし流れる方向を調べることにした。東北線の橋より上流に流れていた。これにより橋で目撃した車が犯人のものと分かった。
一部のナンバーを手がかりに車の捜索に当たる。首が見つかり、歯のブリッジ、また足のペディキュアから被害者が確定した。被害者の知人から人間関係を洗い出す。車の持主が分かり、誰何すると車で逃げられた。追う刑事たち。車は事故を起こし容疑者は死亡してしまう。
しかし死亡者が犯人ではないらしい。事件当夜車を他人に貸していて現場不在証明もあった。とうとう最後に犯人を見つけ逃走劇の末、捕まえる。