2019年12月31日火曜日

シェリダン『悪口学校』 The School for Scandal 1777

アイルランド人シェリダンによる戯曲。
二人の兄弟がいる。兄は紳士的で通っているが実は偽善的で、放蕩者だが正直な弟。共にある女を好いている。兄の方は専らその財産目当てである。

インドから叔父が帰ってくる。変装して兄に会い、無心を言うが聞いてもらえない。弟は財産をほとんど使い尽くしている。叔父は商人に化け弟に会う。残っている肖像画のうち、その叔父の肖像画だけは売らないと言う。自分に良くしてくれたからだと。これを聞いて叔父はすっかりしんみりした気分になる。
偽善者の兄が好いている婦人と一緒の時、その婦人の夫(兄弟の後見人)が来る。あわてて屏風の陰に隠れる夫人。後見人と兄が話しているうちに弟が来る。後見人は戸棚に隠れる。兄弟の話を聞いているうちに実際を知った後見人は飛び出してくる。更に別の小娘がいると聞かされていた屏風の陰には自分の妻がいて仰天する。これで兄の実態はばれた。
劇の終わりには叔父の正体も分かり、弟は好きな女と結婚できる。

人物の一人が物陰に隠れ、その後、別の者が同じ場所に隠れようとする、この展開はモーツァルトの『フィガロの結婚』でもおなじみである。この可笑しさを本劇でも味わえる。

2019年12月30日月曜日

郵便配達は二度ベルを鳴らす Ossessione 1942年

ルキノ・ヴィスコンティ監督の処女作、140分、白黒映画。
何度も映画化されているケイン原作『郵便配達は二度ベルを鳴らす』が元である。

街道沿いの食堂に機械工が寄る。そこの主人は中年男で、妻は若い。毎日単調で年上の亭主にうんざりしている。若い男は魅力的だ。男は車の修理などで腕を見せ、そこの店に雇ってもらう。主人のいない隙に男と妻はよろしくやっていた。
男は繋がれた生活に嫌気がさし、女に一緒に旅に出ようと誘う。女は渋る。男の魅力についていくことにした。しかしながら安定した生活に未練のある女は男と別れ、戻る。
男は別の男に会い、一緒に旅をする。祭りをやっているようなところで、あの主人と妻に再会する。主人はのど自慢に出て賞をもらう。男はまた店に戻る。

妻は男と一緒になりたい。亭主が邪魔である。男と協力して亭主を事故死に見せかける。これで店と男がものになった。女は喜んで働く。しかし男は死んだ亭主の影が見える店に関心がなく、別の若い女と懇ろになっていた。その頃、以前の亭主殺しの真相を警察がつかむ。警察が嗅ぎまわっているのは、別の女に気を移した自分を恨んでいる女のせいかと思っていた。女から妊娠していると聞かされまた愛するようになる。
追ってくる警察の車を逃れ、高速で飛ばす。事故が起こり女を死なせる。

こういう話はやはり勧善懲悪にしなければならないのかと思ってしまう。

オーディション 平成12年

三池崇史監督、アートポート配給、115分。
三池監督の作品、海外で話題になったらしい恐怖映画である。

妻が病死し、その病室へ幼い息子が妻に見せたいものを持って来る場面から映画は始まる。
その息子も大きくなった。息子から再婚したらどうかと勧められる。
男は友人に相談する。映画のオーディションをする。そこへやって来た女の中から気に入ったのを見つけたらどうかと言われる。
オーディションで多くの女がやって来る。そのうちの一人に男は目をつけた。付き合ってくれるよう申し込む。女の過去はあまり楽しいものではなかったらしい。その過去だが、申請された書類には色々疑義があった。男は女に関心があるから調べる。怪しい老人とかに会う。
女は最後に男に麻酔をかけ、動けない状態にして脚を切断しようとする。息子が帰ってくる。女は息子もしびれ薬で麻痺させようとするが、階段の上から息子に蹴落とされ動けなくなる。

確かに一見の価値はあろうが、三池監督の中であるいは日本の恐怖映画の中で突出したものだろうかと思ってしまう。

エストラパード街 Rue de l'estrapade 1953年

ジャック・ベッケル監督、仏映画、85分、白黒映画。
仲の良い若い夫婦が、夫の浮気を元に別居の危機となるがもちろんお互い好き合っており、元の鞘に収まるまで。

カーレーサーの夫は別の女と火遊びをした。もう別れようとしたところを妻の友人に目撃され早速注進される。その前に妻は夫の職場を訪ねた際、何か別の女が来るらしいと分かり、怪しんでいた。友人からの情報で妻は家を出て、エストラパード街の高層アパートに部屋を借りる。その部屋の隣人が西洋人によくある、女に積極的な若い男で、妻に攻勢を仕掛ける。妻の方も男に対して礼を尽くそうとするつもりか、好意的に接する。図々しい男は妻と同じ部屋に居座るつもりまでになる。
この間、夫も妻もお互いが気になってよりを戻したいと思っている。妻も夫も相手に接しようと試みるが、誤解などですれ違いになる。最後には夫は妻を迎え、車でエストラパード街を後にする。

1950年代のパリの街が背景となる。夫婦の家は結構広く見えるが、映画なので普通より広くなっているのか、カーレーサーという職業は高給取りなのかと思った。

芝生は緑 The Grass is Greener 1960

スタンリー・ドーネン監督、ユニヴァーサル、104分、総天然色映画。

よろめき夫人の顛末。イギリスの古い館、城館と言ってよい。そこに住むのはケイリー・グラントとデボラ・カーの夫妻。館は観光用に開放している。ある日、観光客のアメリカ人のロバート・ミッチャムが間違え、私的な区画に入りカーと会う。石油王というミッチャムは早速、美人のカーを口説き始める。散々褒められたカーも満更でない気分になる。
ミッチャムとグラントは会い、お互いこれも外交辞令のやり取りをする。カーはロンドンへ出てミッチャムと逢瀬をする。カーの友人、ジーン・シモンズはグラントに二人の仲を注進する。グラントも二人に気づいており、ミッチャムを館に招待する。

ミッチャムはグラントにカーと結婚したい旨、告白するつもりであった。グラントとミッチャムは決闘することになる。館の中の長い廊下で拳銃による決闘になる。
銃声を聞いて驚き駆け付けるカーとシモンズ。グラントは腕に怪我をしており、ミッチャムとシモンズは医者を呼びに出かける。グラントとカーはかなりの会話をした後、もちろんよりを戻す。本作で凝っているのは、このグラントの怪我に裏話があって、後に分かる。
ミッチャムは明くる朝、シモンズと共に館を後にした。

こういうよろめき劇では、最後は当然元の鞘に収まるわけで、結果は分かっているのだから、そこまでどう料理するかが関心である。
なおミンクのコートを巡る挿話があり、ミンクのコートが女の憧れの的の贅沢品だった時代の話と分かる。

2019年12月27日金曜日

東京オリンピック短篇ドキュメンタリー選集 昭和38年から41年

国立フィルムアーカイブでオリンピック映画特集を上映するにあたり、過去の大会の記録映画以外に、東京大会に関し、当時製作された記録映画が4本(うち一本は白黒、あとは色付き)上映された。

オリンピックを運ぶ           昭和39
野田眞吉監督、輸送経済新聞社、41分。
オリンピックの輸送関係を担当した日本通運がいかにオリンピックに貢献したかの記録。外国からの馬や競技用のボート等を船や飛行機で運送してくる。またマラソン等の競技に使う標識の整備と設置及び撤去作業など、競技の裏方の奮闘ぶりが記録されている。
東京オリンピックはまさに国家的行事であったから、民間会社も精魂込めて協力した様が分かる。

ふたりの長距離ランナーの孤独         昭和41
野田眞吉監督、9分、白黒映画。
これはマラソン競技時にいきなり飛び込んできて、走者たちと走り出した一人の男を警備が捕まえ連行される様子がたまたま映像として捉えられていて、それを基にした映画。
多くの観衆が見守る街中での出来事であり、数十秒の白黒フィルムである。それを9分の映画にしているので、何度も何度も繰り返して放映される。英語による男と女の歌が背景に流れ、不思議な映画であった。

闘魂の記録 オリンピック東京大会を目指して               昭和38
西尾善介、山添哲監督、東京シネマ、35分。
オリンピックを目指して会場等の準備の様子、また選手たちの訓練に励む模様が記録されている。松下電器の企画映画であり、最初の方に若干ナショナルの宣伝めいた部分がある。
国立競技場及び高速道路が整備された。その証明の工夫は松下電器が担当した。別にコマーシャルの文句が出てくるわけでないが、服にナショナルのマークが入っているとかで分かる。
選手たちの訓練の記録の方が長い。基礎的総合的な体力をつけるため訓練に励む。最初に出てきたのは現在では廃止された兎飛び、次は上体起こし、これも今では腰を痛めると言われている。当時の日本の得意種目であった体操、レスリングなど。外国の選手らを招いて競技をした。最後に女子バレーボールでの激しい訓練の模様が映される。
昭和30年代であり、選手たちの体形がかつての日本人らしい。

オリンピックの街               昭和39
荻野茂二監督、27分。
オリンピック開催当時の東京であろう、街の様子を記録した映像。音楽は流れる。日本の唱歌など(歌詞はない)である。しかし説明、言葉は一切ない。音楽の背景で東京が映し出される。いかに当時がオリンピック一色に染まっていたか分かる。色付きで音楽も流れるのに言葉が全くない映像は珍しかった。

2019年12月25日水曜日

スポーツよ、君は平和だ! О спорт, ты - мир! / O Sport, You Are Peace! 1981

ユーリー・オゼロフ監督、モスフィルム、149分。
1980年第22回夏季オリンピック モスクワ(ソヴィエト連邦)大会の記録映画。ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議の意で、アメリカ、日本等多くの西側諸国が参加を拒否した大会である。オリンピックは政治によって支配されると改めてわかった回であった。その当否には様々な意見があろう。英、仏、伊など参加して西側の国もそれなりにある。

映画はまず、そもそもオリンピックの始まりに関する古代ギリシャの故事を漫画映画で説明する。ギリシャの諸国間の争いをオリンピックの開催によって一時的に休戦にした。この故事を持ってくるのは、政治的理由でオリンピック参加を拒否した西側諸国への当て擦りに見えてくる。映画途中でも度々漫画映画が入る。
開会式と閉会式は工夫をこらし豪華である。チャイコフスキーの音楽が流れる中、観客席の人文字や、マスコットである熊のミーシャを使うなど、華やかで観ていて楽しい。
開会式の後、オリンピックの委員会に西側の参加拒否を批判させている。日本人の委員も日本が参加できなくて残念だったという。

ともかくアメリカ等多くの国が参加しなかったため、競技の成果に関して普段の大会のように評価できない。不参加を余儀なくされた選手たちの中には、この時が生涯で最高に活躍できる機会だった者もいよう。残念であった。

2019年12月22日日曜日

美の祭典 Olympia – Fest der Schönheit 1936

レニ・リーフェンシュタール監督、オリンピア・フィルム、126分。
1936年第11回夏季オリンピック ベルリン(ドイツ)大会の記録映画の第二部。
第一部「民族の祭典」で記録された以外の競技が対象である。

競泳や飛び込みなど水上関係、馬術、クロスカントリー、体操、サッカー、ホッケー、自転車など。
当時は水泳が日本の得意競技とされていたようで、競泳で日本勢が多く出ており、西洋人で日本を破る様子が快挙と説明される。この大会で有名な、前畑秀子選手が優勝した平泳ぎは記録されていない。当時の日本公開時は、それを加えて放映されたそうである。

馬術は時間をとって記録される。ほとんどが軍人で日本の軍人も映される。軍人にとって馬術が必要な技能とされていた時代の反映である。障碍の柵を越えた後に池があるところでは、多くの騎手が転倒しずぶ濡れになる。骨折した選手もいた。完走は半数もいなかったとか。日本の軍人は前回のロサンゼルス大会では優勝したそうである。
最後は飛び込み。多くの映像が映し出される。名前も出さず、影のみで跳躍する姿が次々と出てくる。

本映画はオリンピックの記録映画、という以上に監督リーフェンシュタールの芸術を表現した作品という感がする。水泳でも水中で泳いで向かってくる姿、あるいは第一部のマラソンでも走る様子、足運びを上から本人が映した、という場面がある。編集でなければ不可能である。記録に徹すべきという観点からは批判が出てこようが、記録ならニュース映画で十分であろう。意見が色々ある。

民族の祭典 Olympia – Fest der Völker 1936

レニ・リーフェンシュタール監督、オリンピア・フィルム、126分。
1936年 第11回夏季オリンピック ベルリン(ドイツ)大会の記録映画の第一部。ここは専ら陸上競技の記録である。

オリンピックがギリシャ起源であるから、映画は古代ギリシャの建築、石像等を映していく場面から始まる。結構時間を取る。本大会がその始まりとなった聖火リレーが映し出される。
開会式ではヒトラーにより開会宣言がなされる。ヒトラーの映像が良く出てくるのも本映画の特徴の一つである。
三段跳びや棒高跳びでの日本勢の活躍ぶりが記録されている。最後はマラソンで、朝鮮人選手が金と銅メダルを取り、当時は朝鮮半島が日本領であったので日章旗が掲揚される。

2019年12月20日金曜日

1998長野オリンピック 名誉と栄光の物語 Nagano ’98 Olympics: Stories of Honor and Glory

バド・グリーンスパン監督、キャッピー・プロダクションズ、119分。
1998年第18回冬季オリンピック 長野(日本)大会の記録映画。
日本の大会だが、監督は外国人で説明は英語である。そのため日本人選手へのインタビューも英語に吹き替えられ、字幕で読む。かすかに背後で実際の日本語が聞こえる。

監督は「栄光の16日」(1984年ロサンゼルス大会)の監督である。やはり今回でも選手のドラマを描く。インタビューを交え、また過去の大会等での選手の映像がかなり入る。
怪我や祖国との板挟みで苦労していたフィギア中国人女子選手の苦悩。
女子スピードスケートでは若い米選手とベテランの独選手が取り上げられる。今回が最初で最後のオリンピックになる米選手、美術への道を選ぶ。独のベテランは過去の失敗が映し出される。
カナダとイタリアのボブスレーでは夫々の選手のインタビューを挟み、両者同時刻で共に金メダルとなり喜び抱き合う。

過去の怪我など不遇から立ち直り、栄光を今回掴んだという話が多い。
最後のスキージャンプでは日本のチームが優勝した。そのうち過去に失敗している原田選手へのインタビューが何度か挟まれる。
総じて出来のいい映画である。

2019年12月18日水曜日

時よとまれ、君は美しい/ミュンヘンの17日 Visions of Eight 1973

ユーリー・オゼロフ、マイ・セッテリング、アーサー・ペン、ミヒャエル・フレガー、市川崑、ミロシュ・フォルマン、クロード・ルルーシュ、ジョン・シュレシンジャー(メインタイトルシークエンス監督)メル・スチュアートが監督を務める。夫々の監督の分担による映像から成る。ウォルパー・ピクチャーズ、110分。
1972年第20回夏季オリンピック ミュンヘン(西ドイツ)大会の記録映画。

始まりのときThe Beginningは、ユーリー・オゼロフ。開会式等。
最も強くThe Strongestは、マイ・セッテリング。重量挙げの選手を描く。
最も高くThe Highestは、アーサー・ペン。棒高跳びを描く。
美しき群像The Womenは、ミヒャエル・フレガー。女性選手の活躍。
最も速くThe Fastestは、市川崑。男子100m走の模様。
二日間の苦闘The Decathlonは、ミロシュ・フォルマン。十種競技。
敗者たちThe Losersは、クロード・ルルーシュ。各競技の敗者たち。
最も長い闘いThe Longestは、ジョン・シュレシンジャー。マラソンの記録だがテロが起きてそれをあるマラソン選手にインタビューする。

各映画監督の工夫ぶりが出て見られる映画となっている。ともかくスローモーションで捉える映像が多い。競技の細部まで見られるのは良いが、またスローモーションかと思ってしまう。
それにしても邦題はどこから持ってきたのか。配給会社がつけたのか。

第21回オリンピック大会 Jeux de la XXIe Olympiade 1977

ジャン=クロード・ラブルク監督、カナダ国立映画制作庁、118分。
1976年第21回夏季オリンピック モントリオール(カナダ)大会の記録映画。

以前の記録映画と比べ差別化して製作されている。例えば結構時間をかけて記録される場合の多い、開会式及び閉会式はあっさりしたものである。開会式の選手入場はカナダだけ。
ある種目の特定のチームないし選手に焦点を当てて追っていく構成になっている。近代五種競技は優勝候補の一であったハンガリーのチームを追っている。最初の馬術の障碍で落馬があり、これで金はなくなりそうだと説明が入る。しかしその後のフェンシングや水泳などで成果を上げていく。しかし結局銅メダルに終わった。

女子体操ではナディア・コマネチが圧倒的な強さを見せている中、ソ連の選手であるネリー・キムを取り上げ、追っていく。また十種競技ではアメリカのブルース・ジェンナーの活躍ぶりが記録されている。マラソンはそれほど尺を取っていない。
日本の選手に関して説明等が入ることはなく、マラソンの多くの選手の中、日本人選手が映る場面があったくらいか。閉会式も五輪旗を降ろす場面だけ。

またオリンピック映画と言えばスローモーションが多用される。それがほとんど(全く?)使われていない。

2019年12月17日火曜日

アムステルダム・オリンピック大会 De Olympische Spelen – Amsterdam 1928

ヴィルヘルム・プラーガー監督、ルーチェ=ウーファ、192分、無声映画。
1928年の第9回夏季オリンピック アムステルダム(オランダ)大会の記録映画。

初期の無声映画によるオリンピック記録映画である。1912年ストックホルム大会の記録映画上映時と同様に、松浪稔東海大学教授の解説付き上映が国立FAで行なわれた。(123日)
織田幹雄と鶴田義行の両名が金メダルを獲得した大会。人見絹枝も参加し、800m競争で銀メダルを取り、その映像も明瞭ではないが記録されている。

乗馬の映像が長い。オリンピックはアマチュア精神によるとされていたが、別の見方をすれば余裕のある貴族のスポーツと縁が深い。競技の乗馬の選手はほとんどが軍人であった。将校軍人にとって乗馬は必須の技能である。その将校軍人は貴族がしていた。乗馬はこのように初期のオリンピックでは重要視されていた競技であった。

昔のオリンピック大会の記録は、最近のものと違ったところを発見する楽しさがある。

2019年12月13日金曜日

栄光の16日 16 Days of Glory 1986

バド・グリーンスパン監督、キャッピー・プロダクションズ、145分。
1984年第23回夏季オリンピック ロサンゼルス(米国)大会の記録映画である。
前回モスクワ大会に米等多くの西側諸国が参加せず、その報復としてソ連等社会主義陣営が参加しなかった回になる。

選手のドラマを描いた作品。オリンピックでの競技だけでなく、それ以前の挿話が語られる。インタビューをして心境を聞く。例えば男子5000m走者のイギリス人は世界記録保持者ながら脚を痛め、決勝には進出できたが最下位に終わる。しかし走者は完走し決して落伍しなかった。続く柔道では山下泰裕選手は試合中にこれも脚を痛め、その苦しみを克服し優勝する様が描かれる。
他にも水泳選手、知りあいの二人のうち一人は怪我で不意な結果となるがもう一人は優勝する。水泳は他にも西ドイツの選手の活躍ぶりが映される。
女子体操でのルーマニアと米の戦いは尺をとり、また十種競技ではライバルの英国、西独の選手の対決も詳しく残している。

普通はオリンピックの華であるマラソンを最後に持ってくるが、この大会で初めて実施された女子マラソンになっている。米の選手が独走状態で優勝する。男子マラソンは映されない。
閉会式の場面では各国の国歌が歌われる。やはり欧米が中心で、日本の君が代もあるが短時間で歌はない。力強い歌でないからだろう。最後は当然ながら米の国歌演奏である。

オリンピックの記録映画は後になればなるほど、出来が良くなっていく。本映画も優れた出来栄えであった。

2019年12月12日木曜日

札幌オリンピック 昭和47年

篠田正浩総監督、社団法人ニュース映画製作者連盟、167分。
1972年第11回冬季オリンピック 札幌(日本)大会の記録映画である。

聖火のリレーが映画の冒頭を飾るのはいつもの通り。最終ランナーは少年少女である。
夫々の競技を追っていく。解説は男女二人。高橋昌也と岸田今日子である。やや変わった趣向と思われたのは、詩を読むのである。選手たちの競技に合わせて。正直合っているかどうかは微妙と感じた。詩は声にして読むものだろうが、単に黙読でも良い詩かもしれない。ただ激しいスポーツの動きの中では調和がとれているのか。
本大会の華といえばフィギア・スケートのジャネット・リンであろう。尺をとって演技を映している。うまくいかなかったところも映っている。

またスキー・ジャンプの笠谷幸生の活躍は、当時を知っている者には最大の思い出であろう。しかし本映画を観て、スポーツに疎い自分は、笠谷等日本選手が優勝したのは、低い方のジャンプと初めてわかった。高い方のジャンプは外国勢にメダルを攫われた、と今回知った次第である。それで自分には本映画を観て札幌大会での感激が落ちてしまった。

今回の国立フィルムアーカイブのオリンピック映画特集の中では、正直それほどのものかと思ってしまった。