2018年4月23日月曜日

勲章 昭和29年


渋谷実監督、俳優座、松竹白黒映画。小沢栄主演。

小沢は戦時中は将校だったが、今は零落の身、妹の家に居候している。娘は香川京子、息子は佐田啓二である。居候先の娘(岩崎加根子)の結婚式の日から始まる。
披露宴の際、かつての部下、東野英治郎が帰っていると聞く。小沢は旧友千田是也の家に行く。東野を千田の身代わりの戦犯としたため、復讐に来たのではないかと心配する。

その東野が小沢の家にやってくる。地球儀の販売を商売にしているが、真意はかつての上官への復讐などでない。再軍備推進である。小沢にその会長就任を頼む。すっかりその気にさせられ、生きがいを感じた小沢は今までとうって変わって精力的になり、全国を回る。
戦時中の知り合いで、今は不動産屋である杉村春子に会い、かつて妾に産ませ今は田舎に一人住んでいる若い娘のことを思い出させられる。東野をその娘のところへやり、娘が山をもらいたいと言うので小沢が山林を持つことを知る。

ドラ息子の佐田はアルバイト先で知った、妾を商売にしている女から惚れられ、小沢が大事にしている勲章を持っていき、犬の首からぶら下げる。
香川は岡田英次と相思の仲であるが、小沢から東野と結婚しろと命令され、最後は二人で駆け落ちしてしまう。

東野が裏でやっていた密輸がばれ、小沢の名や顔が新聞に出る。立場がなくなった小沢は佐田と共に娘のいる田舎へ行く。娘から山林をねだられるが、もうやれないと答える。その山林で、馬鹿にする佐田を拳銃で思わず撃ってしまう。茫然とし山に消え、銃声が鳴り響く。

時代は保安隊による再軍備という逆コースを背景にし、それへの揶揄がある。勲章は過去の遺物の象徴である。小沢演じる旧軍人が馬鹿に見えるかもしれないが、終戦まで威張っていて、それを社会が認めていた階級の、落ちぶれや感情としてはわかるところがある。

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