片腕だけが河川敷で見つかる。後に別の場所で片脚が見つかる。警察はバラバラ事件として調べる。あるパン屋に話は移る。そこで働いている美大生の男女が外国旅行で、やや長期の休暇を取りたいと言い出す。代わりの男が同じ美大にいて店に紹介する。パン作りをやらせてみるとうまい。片腕の形をしたパンを焼く。本物そっくりである。話題になり売れる。
その店に通う美大の教授がいる。ある日、それまでと感じが全く異なり、予言者めいた言辞を吐くようになる。知らない筈の他人について事実を述べ、それらが悉く当たる、真実と分かる。評判になり、予言を聞こうと公園に大勢集まる。美大の女学生が教授の助手となる。腕の形をしたパンとの関係で、警察もパン店に来ていた教授の様子を見に来る。教授は集まったうちのある若い男に触ると、男は数メートル飛ばされる。若い男は教授を利用し儲けを企んでいた。教授は暴行罪容疑で逮捕される。教授は自らを神(GOD)と呼ぶ。裁判になって検察側は精神病を装った詐欺として告発する。教授は全く動じない。判決は執行猶予付きだった。
最後の方で教授は刑事に告白する。自分は神で、初めはパン作りの美大生、次いで教授に乗り移ったと言う。別の宇宙からこの宇宙でのほつれを直すために来たと。それが片腕や片脚だった。神がどういうものか刑事に哲学的説明をする。役割は終わったので、会ったみんなの記憶を消して終わる。(新潮文庫、令和5年)
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