2015年3月24日火曜日

ルソー『孤独な散歩者の夢想』 Les Reveries du promeneur solitaire 1778

ルソーが晩年につづった随想。

有名な『告白録』では幼年期からの出来事を告白しているわけだが、この晩年の作は事実の叙述(もちろんあるが)より、自らの思いを徒然なるままに書き綴っている。未完で生前は出版されていないが、感想を主体にした日記のようなものである。

自分はまだルソーに対する自分なりのイメージを確定していない。そのためこの作品もルソーの思想全体の中での位置づけとかはできていない。

単純に読んだ感想をいうと、老齢に達した者の達観という感じは全くしない。自分は理解されなかった、自分は善人なのに周囲は自分を迫害し続けたというような、悪く言えば被害妄想的な調子なのである。

実際にルソーは迫害を受けた。禁書になり亡命した。正直ルソーの偉大さは生前十分理解されなかったと思う。しかしながらベストセラーも出しているし、何より迫害を受けたのも自らの思想開陳による。他人に理解されないのは常ではないのか。正直に不当さを訴えているのは純粋さの表れかもしれない。老いては誰もが孤独を感じるものではないか、とも思った。
もしこれが偉大なルソーの著作でなければ今まで読み継がれてきたのでろうか。

細部についてはいろいろある。また読み返したい。その時はまた違った感想を持てるであろう。
青柳瑞穂訳、新潮文庫版

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