2015年3月25日水曜日

ストリンドベリ『令嬢ジュリー』 Froeken Julie 1888

スウェーデンのストリンドベリによる戯曲。

構成はかなり単純で、登場人物は令嬢ジュリーと下男、料理女の三人だけ。特に最初の二人の場面がほとんど。

ヨーロッパの階級社会を前提とした話。祭りの日、高慢な令嬢がかなり観念的に下男に近づき、ことが起こってから外国へ逃げようかと話すが、もう現実的になった下男は醒めている。このような話は現代の日本では縁のない出来事であろうか。階級の差がないというか、階級概念で考えることのない日本では起こりえない。戦前はどうであったろうか。明治時代などまで遡るまでもなく貧富の差が大きく、かなり意識の差が金持ちと貧乏人にあったと思うが、欧州の階級社会にどの程度似ていたのか、違うとすればどう違うのか。

脱線したがこの劇そのままの設定は現代では考えにくい。ただし読んでいて他人事とは思えない状況も想像できる。現代では人はほとんどそれなりの暮らしをしている。そこから冒険をしてみようと思い、あるいはともかく今の状態から抜け出したいと思い危ない状況になってしまう。これまでの生活が危うくなる、どう対応すべきか。自分の意思では後戻りできないまでになったら、前に進むしかないのか。

こんなことを考えさせる劇であった。
毛利三彌訳、講談社版世界文学全集58

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