2014年12月13日土曜日

モーパッサン『ピエールとジャン』 Pierre et Jean 1887

モーパッサンの中編小説あるいは長編小説。


兄ピエールは医師、弟ジャンは法律家である。ある日父の友人が亡くなる。その遺産の受け取り手はジャンと指定されていた。急に金持ちになった弟、それに嫉妬する兄という話。並行してジャンの結婚話も進む。
兄ピエールは嫉妬に狂い、妄想を逞しくしていく。なんとこれが妄想ではなかったのだ。やりきれなくなった彼は外国航路の船医になろうと決意する。母親の苦悩も描かれる。弟は遺産相続についても悩むが、それより結婚したい相手への思いに筆は割かれている。劇的な結末が用意されているわけでない。

細かい詮索をしてもしょうがないが、妻が嫌悪し軽蔑しきっている夫に生涯付き合うことはあるだろう。だからと言ってかつての恋人にいつまでも執着しているものだろうか。恋愛感情はそんなに長く続かないものではなかろうか。
杉捷夫訳、新潮文庫、昭和27年、45年改版

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