2014年12月10日水曜日

狐と狸 昭和34年

千葉泰樹監督による行商人と買い手の駆け引きを狐と狸の化かし合いに例えた喜劇。総天然色である。



 
舞台は茨城霞ヶ浦周りの田舎。大学出の夏木陽介は就職できず叔父の加東大介を頼って行商人になると言う。夏木は加東に連れられて実地訓練の行商へ出かけるが叔父の口上のでたらめぶりに呆れる。人絹を絹と言い化繊を純毛と言って憚らない。加東は商売では挨拶以外はでたらめだとうそぶく。買い手の農家の連中も海千山千の強者たちである。この行商仲間にはほかに小林桂樹、三井弘次、山茶花究、清川虹子がいる。途中からかつての加東の仲間であった森繁久弥も加わる。もちろんインチキ商品とばれることがある。その場合は宿を逃げ出し他の町へ移る。宿へ騙されたことに気がついた荒くれ男たちが怒鳴り込んできた。売人たちはびびるが清川が丸め込む。小林は子供が急病になり家族の元へ帰る。清川が妊娠する。産院へ行くのに亭主なしでは嫌だとして一晩限りの役を加東に頼む。

その後加東と清川は競輪へ行く。一同の金を預かっていた。大当たりするがスリにとられる。夏木は恋人と遭遇し今の状況を説明する。二人でやれば東京でなんとか暮らせるとして行商の生活から抜け出すつもりだった。宿へ帰ってみると皆深刻な顔つき。かねを掏られたからである。加東は発奮して問屋から大量の商品を仕入れ、みんなで協力して売ろうと訴える。

オート三輪に品物を満載して田舎のまちへ行く。大特売と宣伝中そこの「有力者」と称する男が、自分が一手に引き受けてやると言い出す。村中の者が集まった会場で、浪花節で注意を引いているうちにカネを手に入れた売人たちは会場を抜け出し、バス停留所へ急ぐ。インチキがばれないうちに逃げ出したいからだ。その停留所で森繁と会う。その間品物が偽物と気づいた村民たちが追ってくる。売人たちはちりぢりに逃げ出すが、加東はカネを森繁に預ける。逃げおおせたものの、再会すると森繁がカネを半分持ち逃げしていたことがわかる。再び落ち込む一同。加東は北海道で旗揚げしようと気焔を上げるが、今度は消沈したみんなは抜け出すと言う。しかし若い夏木が自分は参加すると言い出す。どこへ行っても苦労はあると。最後は北海道を目指す一同があった。

高度成長期の真最中であるが、まだ昭和30年代前半は、生活水準は低く地方は貧しかった。大学を出ても就職先がないとは当時としては考えにくいが景気の好不況はあったわけである。売人たちのバイタリティーには感心するがインチキ商品を売るのは抵抗がある。戦前アメリカなどでmade in Japanが粗悪品の代名詞だった時代があったそうだ。その時代とまだ繋がっている頃の話ということであろう。

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