角川文庫の『不思議の国のアリス』は現在は河合祥一郎訳で出ているが、その前、昭和50年に出た福島正実訳のアリスである。一般的にいって挿絵は重要である。特にアリスについてはジョン・テニエルの挿絵が正典となっており、誰でもまず最初にこのテニエルの挿絵に親しむだろう。
しかし他の挿絵もある。本書、福島正実訳の角川文庫では、我が国の代表的な挿絵画家の和田誠が、表紙及び中の挿絵を描いている。それが本書の一大特徴である。なお福島正実訳の前の角川文庫版アリスは、岩崎民平訳であり(昭和27年のち改版)、テニエルの挿絵であった。ただ表紙絵は広みさおという人の絵であった。
なお『鏡の国のアリス』の訳も現在は河合祥一郎であるが、以前は岡田忠軒訳(昭和34年)だった。この岡田訳の挿絵はやはりテニエルだったが、表紙絵は広みさおであった。不思議の方は岩崎訳、福島訳、河合訳と変遷してきたが、鏡の方は岡田訳、河合訳と一度しか変わっていない。
福島訳の不思議の国のアリスが出た時であろうか、岡田訳の鏡の国のアリスも表紙絵だけ、和田誠のものに変えた。不思議の方は表紙も中身も和田誠の絵だが、鏡の方は表紙絵だけ和田で、中の挿絵はテニエルのままだった。訳が変わっていないせいだろう。
個人的には鏡の国のアリスは昔、岡田訳の角川文庫を買い、それで広みさおの表紙絵にずっとなじんできた。だから今でもそれが自分には懐かしい。それでわざわざ広みさおの表紙絵である、岩崎民平訳の不思議の国のアリスまで古本で購入した。
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