2020年11月21日土曜日

バルザック『鞠打つ猫の店』 La Maison du chat-qui-pelote 1830

 

芸術家(画家)と商人の娘の結婚が引き起こす悲劇。パリにある古い建物、4階建てで猫が鞠を打っている絵が描かれている。青年画家はその家に惹きつけられる。更に窓から見えた若い女に恋する。羅紗商人の家でそこに二人の姉妹がいた。妹は器量良しである。主人は姉から嫁に出したいと思い、一番の店員と結婚させるつもりだった。その店員は妹に恋していた。器量良しの妹を見つけたのが冒頭の画家である。妹も青年に恋した。画家の青年はその家や妹を描き、求婚する。父親は身分違いの結婚は不幸になるだけだと信じている。しかし青年が画家だけでなく、貴族と知って妻や親戚が大いに乗り気になる。本人も好いており画家と妹は結婚する。同じ日に姉と店員の結婚式もあった。

夫を愛してやまない妻だが生まれによる地が出て、上流社会に全くついていけない。何とか夫と同等になろうと勉強するが、やっても無駄だった。(この辺り『「絶対」の探求』を思い出す)夫が現を抜かしている貴族夫人のところへいって窮状を訴える。相手は同情してくれるが、夫は妻が一層嫌いになるだけだった。最後は妻は若死にする。

芸術家である夫は贅沢をし、家庭など顧みないのが当然だと思っている。バルザック自身の考え、行動に沿っているかと思われた。

澤田肇訳、バルザック/芸術狂気小説選集1、水声社

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