2019年4月18日木曜日

ジョルジュ・サンド『黒い町』 La Ville Noir 1861

青年労働者の成長と、その恋人である娘を描く。

川沿いにある工場の町、そこが黒い町、労働者の町である。武器刃物工の若者セテペは腕に自信があり、熟練工と自他共に認めている。恋人のトニーヌとは将来を約束した仲だった。しかし野心に燃えるセテペは、財産のないトニーヌと結婚しても出世につながらないので、解消したく思っていた。トニーヌはよく気が付くので、セテペが自分と結婚したくないと忖度し、自分の方から結婚の約束を取り消す。

自分の野望を満たす第一歩として古い工場を買い取り、操業を始める。しかし思うように利益が上げられない。その間、トニーヌは持ち前の親切心から他人に尽くし、町の評判を得る。
セテペもトニーヌの良さを改めて知り、彼女の心を得るためには出世し、金儲けするしかないと信じている。

トニーヌに真面目な青年医師が結婚を申し込む。トニーヌは内心、今でもセテペに惹かれている。セテペはうまくいかなかった工場を雇い人に任せ、修行の旅に出る。ドイツに行き未亡人宅で仕事をし、ここで落ち着いてもいいかと思う。そこへトニーヌが危篤との手紙が来る。目覚めたセテペは直ちに故郷の町に帰る。
もう医師と結婚したと思っていたトニーヌは、遺産を相続し金持ちになっていた。それを社会慈善事業に費やしていた。恋人二人は結婚する。

解説によると本作はフランスの、産業問題を扱った小説として最も早いものという。
そういう意義を認めるにしても小説としての出来はどうだろう。トニーヌはまるで天使のように描かれている。セテペは小説によく出てくる、自分の立場でしか考えられない男である。

最後の方はサンド自身の若い日の小説でも扱った、空想的な社会主義の理想を描いている。途中まで読めば最後はわかるし、小説として起伏に富んでいるとは言い難い。ともかくサンドの作であるから関心のある向きは読むべきであろう。
石井啓子訳、藤原書店ジョルジュ・サンドセレクション72006

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