2019年4月20日土曜日

からっ風野郎 昭和35年

増村保造監督、大映、96分、総天然色映画、三島由紀夫主演。
三島は頼りないやくざの二代目、事務員の若尾文子を好きになるが、最後は相手側のやくざに殺されるという筋。

根上淳扮する敵のボスを傷つけて服役中の三島のところへ面会がやって来る。たまたま代わりに出た囚人が銃で殺される。根上側の復讐だった。出所は隠れてやった。
今までの女だった水谷良恵とは縁を切るが、事務員の若尾文子と関係ができる。次第に本気で若尾を好きになる。

偶然会った根上の幼い娘を誘拐する。根上が持っている、危険な試薬を寄こせと脅す。その薬で製薬会社をゆすれるからである。その争いはより上位のボスの仲裁で、試薬は折半となる。
若尾が妊娠する。堕ろせと三島は言うが産むと言って聞かない。故郷へ帰させる東京駅で若尾を待たせ、三島は赤ん坊用の服を買いに百貨店へ行く。そこで付け狙っていた殺し屋に銃殺される。

大映の俳優らに加え、志村喬など参加し豪華な出演陣であるが、肝心の主役である三島の棒演技ぶりで散々の評判だったという。誰が観てもすぐわかる。話題性でヒットしたらしいが。
三島も酷評ぶりに落ち込んだそうで、せっかく大映と契約したにもかかわらず、主演作はこれきりだった。映画の全盛期にもかかわらず。

以前の初見ではつまらないとしか思わなかったが、再見では結構面白かった。
大学出の親友、船越英二に自分は小学校しか出ていない小学士だとおどけるが、東大法科出の三島ならではのおふざけである。外国だったら観客が笑ったろう。実際このチンピラやくざ役は三島自身の願望の現れでもある。インテリの自己嫌悪として三島は知識層の正反対である、労働者等を評価していた。目立ちたがり屋であった三島にとって映画出演は希望であった。

この三島の学芸会とも言うべき映画は、三島が主演したことによって観られるべきで、一般的な評価をしてもしょうがない。かえって大根演技によって、より価値が増しているように思える。

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