2019年4月12日金曜日

アントニオ・ミラ・デ・アメスクア『悪魔の奴隷』 El esclavo del demonio 1612

宗教劇、すなわち神と悪魔のどちらかに支配されるかで人間の運命が決まる、といった主題を扱っている。

姉妹二人のうち姉はドン・ディエゴと相思の仲で、妹は敬虔的な娘である。恋人ドン・ディエゴが姉のところへ忍び込もうとする。そこへドン・ディエゴの友人で、聖人の道を目指しているドン・ヒルがやってくる。ドン・ヒルはドン・ディエゴに説経し、道ならぬ恋を阻止する。しかしドン・ディエゴが去った後、ドン・ヒルは姉の魅力に憑かれ、自分が忍び込む。ドン・ヒルを恋人と勘違いし、間違いを犯した姉は、ドン・ヒルと共に去る。二人は山賊になる。その後ポルトガル王子がやって来て妹に恋するなどの挿話がある。
山賊になった姉はドン・ディエゴのせいだと思い、彼を恨む。後に彼を許す。ドン・ヒルのところへ悪魔がやってきて悪事をけしかける。
姉は亡くなる。ドン・ヒルは悪魔の奴隷となった自分を反省し、罪滅ぼしの旅に出る。

簡単に心が変わり、女を盗んだうえに山賊になるなどは現実感が欠ける。恋人と山賊になるなどカルメンとドン・ホセを思い出す。
宗教的な劇であり、現実性などはそれほど重要でなかったかもしれない。
佐竹謙一訳「スペイン黄金世紀演劇集」名古屋大学出版会、2003年所収

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