2015年1月9日金曜日

狭き門 La Porte étroite 1909

アンドレ・ジィドの小説。何十年ぶりかの再読。

主人公ジェロームの回想録という形をとる。彼は従姉のアリサを好いている。片思いではない。お互いに好き合っている。周囲も結婚するものと期待している。しかしながらアリサは神に対する愛が強く結婚にふみきろうとしない。最後は小説によくある死をもって終わる。その後の部分はアリサの日記になり、主人公に代わってアリサの側からみた告白となる。そこでもジェロームに対する愛は語られている。しかしながらそういった地上の愛を選ばなかった。

以上のような物語なのだが、別に楽天的なアメリカ映画的な感覚で批判しようとするまでもなく、なぜ結婚できないか突っ込みたくなる。いくら信仰が強いといってそれが男女間の恋愛や結婚に妨げるものなのか。理屈だけならそう思わないか。ただし理屈と実際の行動は別である。好きな人がいながら結婚できなかった人は昔は特に多かった。これが共感できる理由の一つであろう。

それにしても神(キリスト教)への信仰で悩むとは日本人には縁のない世界である。平気で神の問題とかのたまう人が多いが本当にわかって(感じて)いるのか。そういう日本人にはわからない世界を描いているからこそ余計魅力的に思えたのであろう。

ジィドは本当に人気があった。新潮文庫で非常に多くの作品が出されていた。今はほとんど絶版である。かつて日本人に支持された理由がわかったような気がした。
新庄嘉章訳、河出書房

0 件のコメント:

コメントを投稿