2014年11月22日土曜日

アチェベ『崩れゆく絆』 Things fall apart 1958

アフリカ文学の近代的起源と位置づけられている小説である。作者は現在のナイジェリアの東南部で1930年に生まれキリスト教徒の家で育った。イボ族という民族出身であるが、原書は英語で書かれている。



19世紀後半のアフリカが舞台。主人公とその部族の生活が、白人とキリスト教の影響により崩壊していく。前半の3分の2は部族の生活が描かれる。主人公は伝統的価値観に生き、戦士として評価され家庭では専制君主である。数人の妻を持っている。長男が軟弱なのが気になる。他の部族からの人質である男の子を養う。その子供を気に入るようになる。部落の決まりで殺すことになった時は自ら手にかける。祭りの最中に誤って仲間の子供を死なせてしまう。その罰として部落を追放され7年間妻の里で暮らさなければならなくなった。その間に自分が支配するつもりでいた元の部落では変化が起きる。白人がキリスト教を布教に来たと聞く。自分たち古来の神々を信じている彼は、最初は鼻で笑うが改宗者が増えていく。7年たって里に戻る。様変わりしておりキリスト教の教会も建った。なおかつ自分の軟弱な長男までキリスト者になる。教会の指導者の白人は、最初は柔和な人物で妥協的であったが、交代して来た者は独善的で攻撃的であった。主人公その他の者が交渉に行くと捕らえられ屈辱的な扱いを受ける。釈放された後、部落へやって来た教会の者を主人公は切り捨てる。最後に主人公は自ら命を絶つ。

 白人の側から見れば未開の民族の啓蒙であるが、原地の者から見れば勝手な宗教等を押しつけてくる侵略者である。この作品ではもちろん民衆への圧迫に対する抗議、とかそういった単純な観点から書かれていない。かなりの部分が白人侵入前の生活や習慣を記述することに割かれている。西洋文明に直面したアフリカの対応が描かれ興味深い。

0 件のコメント:

コメントを投稿