随分前に亡くなった夫を記念した孤児院を建てようとする女主人。外国へ行っていた息子が戻ってくる。その息子は女中に恋をしているようだ。
女主人はかねてより知り合いの牧師を顧問として相談相手にしている。この牧師は「俗世間」を代表するような存在。息子と女中の過ちが起こったと知った時、女主人は過去の幽霊が出たと叫ぶ。
後半でこの竣工直前の孤児院が火事で焼ける。過去の「悪事」が暴かれる。死んだ夫は放蕩者であった。女中も彼の不義の子。義理のきょうだいと恋愛中にあったと知った女中は家を出ていく。それだけでなく夫の放蕩による性病が遺伝した息子は死に至る。
題名の幽霊は女主人が叫ぶことからきているがこれは亡夫の淫蕩(とのちにわかる性病)の遺伝を息子が受け継いでいることを指す。
昔の日本人なら「親の因果が子に報い」と言われそうな劇である。最後にからくりが判明する、という推理小説のようなつくりの劇がイプセンには多い。この劇の他にも『ロスメルスホルム』や『建築師ソルネス』など過去の男女関係が起こした因縁が今の悲劇となって現れるといった構成である。
正直言って初見でこの劇をみても、わかりにくいかもと思った。もう既に古典となっているイプセンの劇だから観客は筋を知っていると想定していいのか。
原千代海訳、岩波文庫
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