2015年4月30日木曜日

天草四郎時貞 昭和37年

大島渚監督、大川橋蔵主演による島原の乱を描いた白黒映画。

美男子であったという天草四郎を橋蔵が演じるとなれば、多くの観客が期待して見に行ったのであろう。そして呆れてしまったであろう。現在でも何の事前知識もなく見れば同様の感想ではないか。記録的な不入りとなり予定されていた大島監督の次作まで制作中止になったとか。

島原の乱を描いていることには変わりない。しかしこの映画は悲惨な結果に終わった乱を悲劇的美学として描くのでもなく農民等下層の抵抗運動自体に力点を置くものでもない。むしろ反乱側の乱れや内部抗争のようなものに関心がある。

ここで大島監督といえば安保騒動を元にした『日本の夜と霧』を思い出す。まさにあの討論劇をこの島原の乱を材料にした映画に無理やり組み込んだような出来なのである。

戦略方法を延々と反乱側で議論する。そして籠城へと出かける組との別れの場面、ここに乱で何万人処刑されたという字幕が出て映画は終わり。あまりの唐突感というか、それまで戦闘の場面とかあったものの、尻切れトンボ感は拭えない。

先に書いたような監督の関心によって作った映画が観客に受け入れられない。それは十分わかる。
しかし制作後五十年以上たった。現在みる我々は上に書いたような事情を知っている。その後世界的に有名になった大島監督の問題作であることも。そういう状況を踏まえて見ると違った感想を持てることもできるようになった。

およそ映画的な娯楽とは隔たりがある、製作者の自己満足のようなものと知っていても、また関心を持てるのである。

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