2015年4月26日日曜日

小林秀雄『ドストエフスキイの生活』 昭和14年

読んだのは新潮文庫版で初版は昭和39年、平成17年に改版され活字が大きくなっている。内容は『ドストエフスキイの生活』のほか、『カラマアゾフの兄弟』『「罪と罰」についてⅠ』、『「罪と罰」についてⅡ』、『ドストエフスキイ七十五年祭における講演』の諸編である。

表題作の『ドストエフスキイの生活』が本の約半分を占める量である。
まずこの文庫版で気になったのは、書誌情報がない。初出がいつどのような形で出されたか一覧をつけるべきでないか。解説を昭和39年に江藤淳が書いており、たまたま表題作が昭和10年から雑誌に発表、14年に単行本として出されたと書いてあった。あと一部の論文は注に初出が書かれていたが、このような基本的な情報は必ずつけるべきであろう。

表題作は小林によるドストエフスキーの評伝であり、ネタ本は解説によるとカーの本らしい。書簡からの引用が極めて多い。内容的に不正確なことが判明している娘エーメの伝記からの引用も多く戦前の著作らしく古めかしい。また筆の勢いで書いたのであろう、どうかと思われる記述もままある。あるいは昔は一般的な情報が少なく、適当なことを書いても差支えない時代であったのかと思わせる。

これらの論文は歴史的な価値はともかく、内容の事実に関して専門家の吟味をしてもらいたい。

日本人によるドストエフスキーに関する著作として最も有名なものであろうが、小林の書いたものはなんでも読みたい人向けであろう。

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