2015年4月25日土曜日

賀川豊彦『死線を越えて』 大正9年

戦前のベストセラーと前から名前は知っていた本。ようやく読めた。

実は勝手に書名から戦争もの、それも記録物と思い込んでいた。実際は神戸の貧民窟での布教活動を描いた自伝的な小説であった。

小説は、明治学院に学ぶ主人公の生活から始まる。いわゆる哲学青年そのものの生き方、考え方が描かれる。父親は故郷の徳島及び神戸で事業を営み、また市長も務める。俗物の塊のような父に対して率直に意見を述べるものの、世間知らずの青臭い青年という感じである。父の死後、彼は神戸の貧民窟でキリスト教の布教に務める。それはまさに聖人君子でしか可能でないと思わせるような犠牲的生活のようである。

普通歴史の表面に出てこない、明治から大正にかけての貧民窟での生活、人々の生き様が描かれ資料的にも貴重であろうと思った。

続編があるようでそれも読みたいと思った。

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