2021年8月18日水曜日

堤林剣『政治思想史入門』 慶應義塾大学出版会 2016

入門となっているが、かなり個性的な政治思想史である。詳細に扱っている思想家はプラトン、アリストテレス、マキャヴェリ、ホッブス、ロック、ルソーである。著者自身があとがきで、まさかのルソーで終わってしまった、などと書いており、もっと書くつもりだったらしい。ただこう書かれると、あまり計画性のない著者なのかと思ってしまった。

正直、入門書なら政治思想史上、特に重要な思想家である上記6人で十分というか、重要な思想を丁寧に解説した方がいい、という選択肢もありえよう。あまり手を広げるだけが教科書の在り方ではない。今、入門書ならと言った。本書は入門と題にあるが、初めに書いたように結構専門的な書に見える。ここで入門書といったら宇野重規『西洋政治思想史』(有斐閣)などを念頭に置いている。本書のような著も大いに結構で、ただ題に入門を入れる必要はないと思う。最近は本書とか小野紀明『西洋政治思想史講義』(岩波)のような個性的な通史が出てきて教科書の幅が広くなっている。

内容の書き方で、これこれの思想家、事項は書かないなどとの記述があるが、このようなことは書くべきでない。書いていないが、他にももっと重要なことがあると言わんばかりの文は余計である。また参考文献を本文に載せているが、これは素人の書き方である。(哲学と宗教史とかいう本を思い出した)巻末に一覧を載せた方がいい。また巻末の注も読めと書いてあるが、だったら本文中に活字を小さくして挿入すれば読者は読みやすい。いちいち巻末をめくる作業を読者に強いている悪習が未だに続いているのは驚くべきである。専門論文ではそうすべきとなっているかもしれないが、本書は一般向けであり、読者の便を図ってもらいたい。

0 件のコメント:

コメントを投稿