2020年9月26日土曜日

鶴光太郎、前田佐恵子、村田啓子『日本経済のマクロ分析』 2019


 官庁出身のエコノミストによる日本経済の分析。この30年間の日本経済を対象とする。日本経済は今世紀に入ってからデフレが続き、その脱却のため金融政策に重きが置かれた。負荷がかかり過ぎたと言ってよい。金融政策によってデフレを回復し経済を正常化するという合意が経済学者、政府の間であったようである。デフレ自体が議論にならなくなっても、日本経済の問題が解消したわけでない。

デフレが凡ての原因という認識がそもそも間違っていたのである。金融政策に焦点が当てられてため、今世紀に入ってからは金融の分析ばかり出ていた。本書は久しぶりに金融に限らず、経済全体を対象とした分析である。章は「課題先進国としての苦悩とその克服に向けて」「鈍化した経済成長」「大きく変化した日本経済の部門間バランス」「変貌する経済循環」「労働市場からのアプローチ」「企業戦略からのアプローチ」「家計の貯蓄率はなぜ低下したのか」「平成の財政・金融政策の機能不全」「低成長・低温経済の自己実現の打破を目指して」に分かれる。分析手法は正統的であり、それで平成以降の経済の問題点を洗い出す。現在日本の経済問題の整理に役立つ。

日本経済新聞出版社刊

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