2020年9月9日水曜日

筒井康隆『誰にもわかるハイデガー』 2018

 


二十世紀最大の哲学書とも言われるハイデガー『存在と時間』、多くの読書家が挑むが、十分な理解を得られないまま、投げ出してしまう例が少なくない。自分の場合もそうだった。解説書の類を見ても良く分からない。もうこの書を読み直すのはやめようかと思ったくらいである。大体、解説書など読んでも『存在と時間』は未完の書であるとか、ハイデガーがナチスに加担したとか、はたまた政治思想家のハンナ・アーレントと愛人関係にあったとか、そんな周辺情報ばかり書いていて、一番知りたい『存在と時間』の内容の分かりやすい説明があまり書いていない。何を言っている書かが知りたいのに、肝心なところが不明のままとなる。

本書は珍しく『存在と時間』の内容が分かりやすく説明されている。その秘密は何か。それは著者が学者でなく、自分の理解のありのままを書けたからであろう。入門書と銘打っても学者は他の学者を意識して書くため、書名につられて入門書だろうと期待する素人には分からない書が多すぎる。本書は筒井の講演記録に手をいれたもので、話す場合は易しくせざるを得ないという長所も活きてくる。更に巻末に大澤真幸の補足解説があり、これも役に立った。

河出書房の単行本

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