2020年9月19日土曜日

南博『学者渡世』 1985

 心理学、特に社会心理学また日本人論の分野で高名な南博(大正3~平成13年)の自叙伝である。

医学部に入るも、哲学専攻の文学部に入学し直す。哲学と並んで心理学の勉強をする。昭和15年にアメリカのコーネル大学に留学。心理学を専攻する。日米開戦では級友らの親切を受け、そのままアメリカに留まり、勉学を続ける。日本への帰国船乗船も打診されるものの、滞米を続けた。戦後日本に帰る。

アメリカについた当時、全く英語が分からなくて困ったなどの記述がある。私的な面についてはあまり書かれておらず、他の自叙伝と異なる。例えば一橋大学教授を長く勤めたが、大学就職関係の記述はない。自分の学問業績をアメリカの大学院時代から書き、戦後に至るまで専らその方面の記述が多い。

戦後の活動の思想的背景はアメリカでの経験や、当時の風潮もあろうが、進歩的であると分かった。

文藝春秋出版

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