2019年10月14日月曜日

神谷美恵子『追憶』 昭和55年

『生きがいについて』の著者として有名な神谷美恵子の自伝である。
著者は出版の前年昭和54年に亡くなっている。本書は遺稿を出版したものである。

目次は次の通り。
1.     スイスものがたり
2.     帰国
3.     ペンドル・ヒル学寮の話
4.     現実の荒波の中で

ジュネーヴでの父親の国際機関勤務のため、家族そろって移住する。美恵子は国際学校に入った。フランス語が日本語より流暢に話せた。そこでの思い出。
帰国してから癩病患者との有名な出会い。癩の仕事に一生を捧げると誓う。
ペンドル・ヒルとは美恵子が入った米フィラデルフィア郊外にあった寮である。ここで日本人もいたが米人等諸外国の者たちと付き合う。
最初はコロンビア大学の古典語学を専攻していたが、後に親を説得し医学コースに進む。
帰国後、特に戦争直後に美恵子は政府の占領軍相手の通訳を勤める。本来は東大の医局で精神医学の勉強、研究をするつもりだったが、時代がそうさせなかった。
結婚後、夫の大阪勤務に従い、関西住いとなる。子供の治療費捻出のため、英語仏語教授その他のバイトをやる。
念願叶って癩治療の長島愛生園に行く。ここでの記録が結構長い。

神谷美恵子と言えば『生きがいについて』が何と言っても思い出される。何度も読み返した本である。この自伝を読み、確かに普通人とはかけ離れた人生を送ったと分かる。もちろん恵まれていたという意味ではない。
みすず書房、神谷美恵子コレクション、2005

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