2019年10月8日火曜日

渡辺佑基『ペンギンが教えてくれた物理のはなし』 2015年

著者は国立極地研究所の所員で、海洋性の動物等の研究をする生態学者である。
鳥や魚、アザラシ、更にペンギンなどの海洋性の生物がどう生きているかを研究する。どう地球を周回しているのか、速度はどの程度か、なぜそのような行動をとるのか、などこれまでよくわからなかった事実を明らかにしようとする。以下は本書の内容の一部である。

海洋性生物がどの位の速さなのか、という基本的事実もよくわかっていなかった。何しろ海に潜ってしまう。速さだけでなく、どこへ行っているのかも不明だった。マグロなどは水中を時速数十キロで泳ぐなどの通説があった。これは昔の間接的な実験からの推測値である。
現在ではバイオロギングという方法が開発された。これは小型の装置を魚等生物に着け、後に回収して調べるのである。海の中は電波が届かずGPSのような装置は使えない。
この方法により、頬白鮫、皇帝ペンギン、白長須鯨の三種が最も速い海洋性生物と判明した。時速は7~8Kmである。これまでの通説に比べ非常に遅いが、水中の抵抗を考えるとこんなものだという。

また鳥の飛ぶ原理についても解説がある。飛行機と同じ原理の流線形翼による揚力だけでは、翼を上下する鳥の飛行は説明できない。前縁渦という後退翼に沿った渦が働いているという。正直鳥の飛行の原理などとっくに解明されていると思っていたので、少し驚いたくらいである。

著者の体験、苦労も面白く、様々な知見が得られる著書である。
河出書房、河出ブックス。

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