2021年7月15日木曜日

未知への飛行 Fail Safe 1964

シドニー・ルメット監督、米、112分、白黒映画。

アメリカとソ連の核戦争が起こるか、を扱った映画。まさに冷戦のさなかの制作であり、いろいろ気になるところがあるが、ともかくこういう事態を当時は恐れていたとわかる。キューバ危機の経験を踏まえているのだろう。米ソの軍拡競争の果てに大量の核兵器を共に抱え、何らかのきっかけでいつ核戦争が起こってもおかしくないと考えられていた。

映画は何らの手違いで、ソ連攻撃の使命を受けたと判断した米爆撃機隊がモスクワへの核攻撃に向かっていく。これは間違いであり、いくら中止の連絡しようとしても米本土から爆撃機隊に連絡がつかない。ヘンリー・フォンダ演じる大統領は爆撃機を撃墜すべく命令を出す。失敗する。ソ連とのホットラインで事情を相手側に話す。撃墜してくれと。これもうまくいかない。モスクワが実際に爆撃されれば報復攻撃で全面戦争になる。フォンダはソ連に次の様な提案をする。もしモスクワが攻撃されれば、ニューヨークに核爆弾を落とすと。ソ連側からの連絡が途絶えた。大統領はニューヨークへの核投下の命令を出した。

これほど緊張感あふれる映画はめったにないだろう。しかしながら最も重要な点で、あまりに非現実的である。こちらの手違いの代償として、ニューヨークを核攻撃するから許してくれと米大統領はソ連に言うのである。こんな提案が受け入れられるはずもない、というかアメリカの大統領が自分の国に核攻撃をしかけるなど正気の沙汰でない。自分が相手に迷惑をかけた、自罰するから許してくれなど個人の喧嘩の話である。国家間の戦争に適用できるはずもない。もちろんありえない。これは映画だからこんな展開になっているのである。ヘンリー・フォンダは映画史上、最も狂った大統領を演じている。

実際にはウォルター・マッソー演じる現実主義者の学者の意見とおりの措置がとられるに決まっている。しかしこれは映画である。ありえない「理想」を描こうとした。真珠湾攻撃をしかける日本軍のような野蛮人ではない。アメリカ人は崇高に自己犠牲を払っても、平和のために尽くすのである。アメリカ人の自己陶酔にしか見えない、ええかっこしいは嫌になるほど映画で見せつけられているが、これもその一つである。

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