2021年6月22日火曜日

月光の女 The Letter 1940

ワイラー監督、米、95分。ベティ・デイヴィス主演。

シンガポールの農園の夜。銃声が鳴り響く。建物からよろけて出てきた男をベティ・デイヴィスが銃を何発も撃ち、殺す。従業員らが多く駆け寄ってくる。農園の主の妻であるデイヴィスは別のところにいる夫を呼びにやらせる。夫が間もなく来る。以前から付き合いのある弁護士、その助手も来る。事情を聞く。撃たれた男は以前からの知り合いで、デイヴィスにしつこく言い寄って来て、到頭今夜殺してしまったと。これを聞いて正当防衛だから罪に問われないだろうと男たちは希望的観測を述べる。実際に男を殺しているので裁判になった。陪審員たちは無罪にしてくれるだろうと期待していた。ところがここで新たな展開になる。デイヴィスが被害者の男に出した手紙、それも事件当日に出した手紙というものが出てきたのである。持ち主は被害者の妻、東洋人の女である。そこにはデイヴィスが男に来て欲しいという要請が書いてある。これまでの供述と全く異なる。弁護士はデイヴィスに問い質す。真相は次の様。前よりデイヴィスが男に惚れていた。東洋人と結婚したので向こうは別れたい意向でいたのに、デイヴィスが執心で男に対して説得しても肯んじないので思い余って殺してしまったのである。もしこの手紙が検察側に渡ったら無罪は有り得ない。この手紙を持ち出してきた助手は、向こうがこの手紙を書いとって欲しい気でいると言う。デイヴィスはすぐに買い取れと言う。しかし弁護士は良心の問題があり、もしそんな買収が明らかになると弁護士の資格さえ奪われる。逡巡する弁護士にデイヴィスは、自分を愛し信じている夫が、有罪になれば大打撃を受けるだろうと言って交渉をさせる。手紙を買い取ったので裁判では無罪となった。祝賀会で、夫はスマトラに移ろうと提案する。ここより条件がいい。ただそれには金がいる。しかし手紙代で貯金は消えている。なぜそんな大金が必要だったかと夫は弁護士に問う。デイヴィスはもう真相を話してもいいと告げ、夫は驚愕して聞く。しかし人の好い夫はそれでもデイヴィスが愛してくれるなら過去は問わない姿勢を見せる。デイヴィスはやはり今でも殺した男を愛していると答える。その頃、被害者の妻である東洋人の女が連れと屋敷の庭に来て、デイヴィスに復讐を図る。

非常に緊張感があり、次にどう展開していくか観衆を引き付ける作りである。欲を言えば裁判後の、始末の付け方をもう少し簡潔に出来なかったかと思った。原作はモームの短篇で、映画の原題もモームの題と同じくLetterであるが、『月光の女』とはうまい邦題をつけたものだと思った。

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