2021年6月6日日曜日

稲垣栄洋『敗者の生命史38億年』PHP 2019

表題の敗者とは強い生物らが栄えている時には、陰に潜んで隠れるようにしていた生きものたちである。環境の変化によって強者が滅ぶと今度は地球上にはびこるようになる。ただ本書の意図は、これまで地球に生命が誕生して以来、38億年に渡る生物の進化の、分かりやすい例による説明であろう。具体的な例を多く挙げているところが本書の一番の読みどころである。

一見、退歩のように見えても、あるいは常識と異なっているように見えてもそれは意味がある。例えば草の方が木より後から進化したと例などである。古い生物の仕組みが今でも残っているのは意味がある。それで生きやすい環境があるからである。一見不思議に見えるような生命の現象をそうあらしめている理由を探っていく。本書後半でニッチという言葉が出てくる。経営戦略でいう隙間市場を思い出すかもしれない。生態系では隙間と限らず、当該生命が生存しうる場所、環境を指す。例えば鳥は空をニッチとしている。夫々の生物がいわば棲み分けの形でニッチを持っている。一つのニッチを巡っては競争、闘争が起こり、敗れた生物は滅んでいく。生命38億年の歴史で地上を支配していた生物はこれまで滅んできた。こう考えると人間の滅ぶ時はいつになるだろうと思ってしまう。

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