2014年9月8日月曜日

新しき土(日英版)

ファンク、伊丹万作共同制作で知られる日独合作の昭和12年の映画で、専ら伊丹監督がメガフォンをとった版である。ドイツ人の女性との会話が英語によって語られる。話の筋は当然同じではあるものの、若干の部分で異なる場面となっている。



まずこれをみて感じるのは当たり前といえば当たり前だが、日本人が見て不自然というか滑稽に感じる部分が少ない。ファンクが指揮した日独版は外国人のみた日本、外国への日本の紹介ということで観光名所案内のような場面がちぐはぐに繋ぎ合わせられており、それを我々が見るとおかしくみえるわけだが、伊丹版ではそういう不自然なところは少ない。良く指摘される東京あたりのはずなのに阪神電車のネオンが出てくるとか、高級ホテルに虚無僧がやってくるとかはない。もちろん残っているところもある。
また原を助けるために小杉が大正池(?)を泳いでいくところや円谷英二が撮影したという地震の特撮の場面がない。時間も10分程度短縮されている。

このように簡潔であり不自然なところが少ないものの、当時は圧倒的にファンク版が人気であったとか。これは日本人だから外国人の監督を見たかったとか(もっともドイツでもファンク版が人気だったようだが)、見せ所が(例え日本人にとって不自然であっても)多い、などであろうか。他の理由もあるであろう。

ともかく『新しき土』といえば今日ファンク版を指すようである。DVDを見ていないが日独版しか収録されていないようだ。正直なところ日独版だけでなく日英版も合わせてみてほしい。フィルムセンターがこれを上映する際いつも両方の版を上映する意味もわかった。それにしてもやはりこの映画は傑作といえない、ただし我々にとって興味深いことは確かだ。

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