2020年7月11日土曜日

ヴォルテール『カンディード』 Candide ou L’optimisme 1759


カンディードと称する主人公の青年が欧州、南米で経験する冒険。楽天主義という副題が付いているように、カンディードは楽天的に生きようとするが、現実はそれを許さない。
この楽天主義は師パングロス博士の教えによる。博士によれば世の中の仕組みは合理的に出来ている、凡てに理由があるから、望ましい状態であると理解する。これはライプニッツの哲学で、それへの反論という面を持つ。

カンディードはドイツ、ウェストファリアの男爵に仕え、そこにパングロスもいる。男爵の娘に恋し、娘との接吻を男爵に目撃され、館を追い出される。
18世紀の欧州大戦というべき七年戦争の時期である。軍隊に入る。戦争による惨禍を目撃し軍隊にはおられず脱走する。落ちぶれた師パングロスに再会する。パングロスによれば軍隊によって男爵邸は焼かれ、娘を含め一族皆殺しにされたという。
ポルトガルに向かう。船は難破し、ポルトガルに着く。リスボンの大地震に会う。地震による審問でパングロスは縛り首にされる。カンディードは助かる。死んだと思っていた男爵の娘に再会する。娘といた婆によって、千夜一夜物語なみの婆の過去の物語を聞く。

南米に向かう。やむなく娘と別れる。カンディードは理想郷のエルドラードに行く。宝石や黄金は全く価値のない場所である。カンディードはそこを発つ際、黄金等を沢山もらう。男爵の娘を捜しに行く。ヴェネツィアにいるらしい。そこにたどり着くまで、死んだと思っていたパングロスに再会し、また宝石等大部分無くした。ヴェネツィアで娘に再会するが、かつての美しさは微塵もなくなって醜い姿になっていた。恋情は失せたが元からの意思のとおり結婚する。労働して生活するしかない。このような状態もパングロスは積極的に解釈するが、カンディードはもう師の教えに共感できなくなっていた。

上記のようにライプニッツへの反論で書かれたにせよ、現在の我々は自分なりの理解で読めばいいわけである。小説としてみても面白い作品である。
丸山熊雄、新倉俊一訳、世界文学大系第16巻、筑摩書房、昭和35

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