2019年5月30日木曜日

小林秀雄講演『音楽について』新潮社、新潮CD講演 2004年

小林秀雄の談話記録。昭和42年、65歳の時に雑誌「ステレオサウンド」誌で五味康祐(剣豪小説家、オーディオ好きで有名だった)を対談相手(聴き手)とした音楽談義が基である。小林の語りが、話題にしている音楽の録音(小林が聴いていたSPLPの古い録音の一部)と共に収録されている。

明治35年、東京神田に生まれた小林が、今では耳にしなくなった江戸っ子で語っている。固有名詞等聞き取りにくい箇所があり添付の解説書で確認できる。

CD2枚から成り構成は次のとおり。
CD1<弦楽器を中心に>
モーツァルト レントラー第1番、エルマン等/談話/ヴィニャフスキ スケルトォ・タランテラ、ハイフェッツ等/談話/ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲、クライスラー等/談話/パガニーニ ラ・カンパネラ、フーベルマン等/談話/バッハ シャコンヌ、デ・ヴィート/談話/タルティーニ 悪魔のトリル モリーニ等/談話/ハイドン チェロ協奏曲第1番、ロストロポーヴィチ等/談話/ベートーヴェン チェロ・ソナタ第3番、カザルス等/談話
CD2<交響曲を中心に>
談話/モーツァルト 交響曲第40/談話/シベリウス 悲しきワルツ/談話/シューベルト 未完成/談話/シューマン 交響曲 春/談話/ブラームス ピアノ四重奏第1/談話/ショパン マズルカ第25/談話/ワーグナー ジークフリートの葬送行進曲(前半)/談話/ワーグナー ジークフリートの葬送行進曲(後半)

内容的にはCD1は演奏者とクレモナの3種を、CD2は楽曲そのものを論じている。
クラシック音楽ファンは演奏者論が大好きである。CD1はまさにヴァイオリン奏者論である。クレモナの3種のヴァイオリン比較もしている。
CD2では音楽そのものを語る(演奏者についての言及はなく上でも演奏者名は省略した)。

時代を感じさせる内容である(悪い意味で使っているのではない)。原音についての論があるが、レコード鑑賞が盛んになり録音と原音の比較論は当時の流行りの議題であった。
小林はバイロイトへ「ニーベルングの指環」全曲を聴きに行っているが「我慢して聴いた」「僕にはわからなかった、ほんとうによくわかりません」「ただ音楽が好きでというならね、それは退屈ですわ」などと言っている。自分のように指環全曲の鑑賞は、音楽から得られた最高の感動であった、という意見に同調する音楽ファンは今なら多いだろう。その他色々気になるところがあるが、小林自身の好み、思い入れに他人がとやかく言ってもしょうがない。
ただ一点挙げておくとアインシュタインがヴェルディを論じていると言っている。この小林の言以外全く聞いたことがない。記憶違いでなかろうか(多いのである、講演記録には)。

世に小林秀雄ファンは多い。自分はしかし、これまで小林の著に感心した記憶はない。この談義は本より分かりやすくより身近に感じられた。本は専門家を意識して書き、言質を取られないよう意識しているから分かりにくいものが多い。講演や談論はより分かりやすいという一般論はここでも当てはまる。

0 件のコメント:

コメントを投稿