2019年5月23日木曜日

岡義武『転換期の大正』岩波文庫、2019

初出は昭和44年、著者自身は改定を希望していたそうだが、果たせないままに終わった。
前著『明治政治史』に続き、大正期の政治動向を記述する。

大正時代の政治は明治と比較してどのような特色があるのか。明治の政治は維新の元勲が元老として支配する時代であった。それに対して大正時代になると政党が前面に押し出されてくる。もちろん背後には山県有朋のような元老の存在が大きかったものの、少なくとも政党政治があるべき姿という認識が高まり、定着した。

もう一点は、国際情勢への対応である。明治時代の政府の大きな対外的課題は、治外法権と関税自主権であった。欧米先進諸国に対し、日本が対等な自立国であると認めさせる努力が続いた。しかし日清日露の戦役での勝利は日本の地位を向上させ、西洋の認識を新たにさせた。これは反面、日本が油断のならぬ国家であるとの思わせるに至った。中国を分割する列強諸国に伍し、中国での日本の権益を図ろうとする行為は他国及び中国自身から反撥をくらった。

原敬は平民宰相として有名だが、本書を読むとあくまで元老山県有朋に逆らうことなく、そのひきで活躍した政治家のようである。原率いる政党政治は国民から大いに期待されたものの、政治の実績は酷かったのですっかり人気をなくしていったようだ。庶民出身で当初は絶大な人気を得たが、その政治に国民をいたく失望させた田中角栄を思い出してしまった。

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