2019年5月31日金曜日

岩田規久男『日銀日記』筑摩書房、2018年

大学教授だった著者が20133月に日銀副総裁に就任してから、2018年に退任するまでの日記が基である。日々の記録と合わせ、その主張を語っている。

黒田総裁と共に日銀幹部となり、バズーカ砲と呼ばれる大胆な金融政策を実施した。
2%の物価上昇率の達成は未だである。なぜ達成できていないのか。書中何度も著者は2014年の消費税引き上げのせいだと述べる。それまでデフレ脱却のレジームが出来ていたのに、消費税の引き上げですっかり景気に悪影響を及ぼし、デフレ・マインドに戻ってしまった。更に原油価格の低下などによって物価は低下していく。

著者は自分に反対する者たちに容赦ない。国会で民主党(民進党)の、全く理解していない質問をする議員に苛立ちをぶちまけている。主婦や国会議員にもわかるように説明できなければ経済を理解していない、とか以前読んだが、著者はそんな考えではないらしい。議員なんて庶民の代表だから大して知見はない。

また就任以前の日銀を徹底的に批判していたので、日銀出身のエコノミスト等の批判、意見に嫌悪や嫌味を述べる。更に消費税を引き上げさせた財務省とその御用学者にも我慢がならない。安倍首相も最初はまともなことを言っていたのに、消費税引き上げはアベノミクスの三本の矢にないではないかと批判する。消費税引き上げはずっと前から、いつやるかの課題としてあったのだから、織り込んでいなければならなかったと思うが。

著者は2%のインフレ実現を至高の目標としているが、経済政策、金融政策の最終目的は経済が良くなることである。書いてあるように、安倍政権下で経済は好転したと言えるであろう。だから本書もいかに日銀の政策によって経済が良くなったか、に焦点を合わせて書いた方がより説得的であった。
著者が恐ろしく攻撃的な人だとよくわかった。

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