2018年2月13日火曜日

ダイソン『宇宙をかき乱すべきか』鎮目恭夫訳ダイヤモンド社 昭和57年



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物理学者F・ダイソンの自伝である。ダイソンは1923年イギリス生まれ。ケンブリッジ大学に進んだ。

年齢から分かるように第二次世界大戦は彼の20歳前後である。戦略爆撃司令部に勤め、ドイツへの効果的な爆撃の工夫に従事した。戦勝国の者であり、連合国側が正義と見做されているのでこういう文章を書けると思うが、多くの空襲を受けた日本の人間としては若干複雑な気持ちになる。

戦後はコーネル大学に行き、後プリンストン高等研究所の教授となった。
自伝の中で特に印象深いのは、原爆開発を指導したオッペンハイマーの記述ほか、当時の原爆のような、科学者と軍事技術の関係が描かれているところである。歴史として後年の執筆とは違い、その時代の専門家の一人がどのように考えていたのかを知ることができる。
まだ冷戦の時期であり、米ソの核戦争を世界が危惧していた当時の記録である。
更に宇宙移住についても科学者としての意見を述べている。空想科学映画ではお馴染みの話題ではあるものの、現在では宇宙での生活の可能性を考える、空想する人は多くないだろう。

ともかく本書を読んで感じるのは、書かれた時代の制約というか、現在では古いと感じる話題など、時代の記録になっている点である。現代では書かれることはないだろう、そういう意味で貴重であろう。

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