2018年2月4日日曜日

中川毅『人類と気候の10万年史』講談社ブルーバックス 2017



 人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス)
古気候学という学問からこれまでの地球の気候変動を解説しようとする。

著者によれば現代は地球の歴史の中では、例外的におだやかな暮らしやすい時代なのだそうである。
普通の歴史と違い、気候の変化を探るためには万単位の年を追う必要がある。
気候の変化を考える場合、ミランコビッチ理論というのがある。これは天文学と気候学を結び付けた理論である。気候の変動を地球の動きの変化により説明する。太陽の周りの公転が楕円に近くなっていれば温暖な時代であり、円に近い公転軌道の時期は寒い時代になるそうである。また地軸が変化する。1万年以上の周期で、地軸の向きが変わる。これが気候に影響を与える。
以上により法則性を見つけ出そうとする。過去の周期の繰り返しなのか、過去に起こったことはまた起こるのか、を考える際役に立つ。しかし当然ながら最近は過去の変動からして逸脱した動きをみせており、これは人間の活動の影響であろうと思われる。

更に過去の気候の歴史を探るために年鎬というものを調べる。これは1年毎に堆積される薄い層である。これを見ることによって過去の出来事を復元できる。地質学の強力な手段になっている。福井県の水月湖はこの年鎬の世界標準となっている層がある。著者が参加したこともあり、本書は水月湖が年鎬の世界標準になるまでの経緯に一番力が入っているというか、熱心に書かれている。

気候変動が農業に与える影響とか、そもそも農業が主になるまでについての著者の考えが最後に述べられている。正直全面的に賛同しかねるところがあると思った。
いずれにせよ本書は気候変動の重要性を改めて知らしてくれる本である。

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