2018年2月4日日曜日

横田商会製作の『忠臣蔵』 明治43~45年



フィルムセンターの特集「発掘された映画たち2018」の一で、マツダ映画社所蔵の牧野省三監督、尾上松之助主演の活弁トーキー版『実録 忠臣蔵』と、元を同じくする映画からの無声版の上映であった。

元々明治時代の忠臣蔵映画は、長さの都合もあって有名場面だけを撮っていた。それをのちに合わせたものが不完全ながら残っている。そのため主演の尾上松之助は浅野内匠頭、大石内蔵助、更に討ち入りで吉良方の侍の役でも出ている。

フィルムセンターが元々所蔵していた版よりも、マツダ映画社版は30分以上長く74分ある。後に入れた活弁によって、全く普通の発声映画と同様に見られる。
断片的とは言え、多くの挿話は入っている。一力茶屋の場面はなかった。後年の映画では討ち入りに成功し、凱旋行進する当たりで終わっている物が多いが、これは更にある。首をとって行進する際、両国橋で役人に止められるとか、泉岳寺の浅野墓前での報告とか。

元が同じで発見された版は、弁士の片岡一郎が京都の骨董屋で見つけたもの。たまたま見つけた際、多くのホモ映画と一緒だったため、同種の映画と言われたとか。片岡自身が会場に来ていて事情を話した。上映は今回が初のようである。
この新規発見版は51分で、画面が大きく映像も鮮明であり染色されている。そして先のマツダ映画社版にない場面が多い。松の廊下はほとんどないが、浅野切腹の場面は長く、赤穗城明け渡しとか、京都の茶屋も出てくる(大石が遊ぶ場面ではない)。討ち入りのところはなく、その代わり、泉岳寺の墓前に瑶泉院かがやって来て浪士たちをねぎらう場面がある。ともかく全くの無声であり台詞の中間字幕もない。

マツダ版と新発見版は補完し合うところが多く、両者をつなげた版を作りたいとフィルムセンターの担当者は言っていた。

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