2018年2月14日水曜日

明治一代女 昭和30年



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伊藤大輔監督、新東宝白黒映画。木暮実千代主演。

明治20年に起きた、芸者による殺人事件を基に川口松太郎が戯曲化したものの映画版。
木暮演じる芸者は歌舞伎俳優と相愛の仲である。今度襲名披露する俳優のために費用を出したいと思っている。ただ彼女のような芸者では捻出はほとんど無理である。木暮に惚れている箱屋(田崎潤)は、役者と別れ自分と一緒になってくれる約束をとりつけ、全財産を処分してカネを作る。そのカネを役者に木暮が届けると、これでは全く足りないと言われる。役者は自分を、娘婿にしたいと思う料亭の女将(杉村春子)の元で襲名披露の準備を進める。

木暮は役者に会いたい一心で連絡を待っているが一向音沙汰ない。田崎は木暮に会いたいため待合や自宅に押し掛けるが、押し返されてしまう。
木暮の自宅に役者から招きという人力車が来た。いそいそと出かけるが、途中川端で降ろされると田崎が待っている。田崎は木暮をなじるが、春の襲名披露まで待ってくれと頼む。言い合いしているうちに出刃包丁が田崎の懐から落ちる。それでもって相手にしてくれない木暮を襲う。もみ合いが結構長く続く。気がつくと木暮は包丁で田崎を刺していた。

木暮は自宅に戻る。弟が正当防衛だからすぐ自首すれば軽い刑になると言う。自首の準備をするうちに襲名披露はどうしても見たい、それまでは捕まりたくないと思い、家から逃げ出す。木暮は指名手配になる。
役者の襲名披露の日。警察や弟は客席に木暮がいないか捜している。披露の山場を過ぎたあたりで、弟が木暮の傍へ行く。客席で捕まると襲名披露を汚す、出ようと誘う。小屋を出て警察に連れられていく。

先に書いたように実際の事件を脚色した話である。花井お梅という芸者はこの事件で、その後長く有名だったらしい。高橋お伝と並ぶ毒婦の代表とされていた。無期懲役の判決で、実際は15年で釈放された。その後も彼女は話題になっていたとか。

正直、随分無理な設定の映画に見えてしまった。田崎は随分長時間、木暮ともみ合う。男が格闘して女に刺し殺されてしまうものか。実際の事件でも男を殺しているのだから文句が言えないが、そういう事実を知らずに観ると無理に見える。田崎は苦労して女のためにカネを工面し、その女に殺されてしまうのだから散々な役回りである。
役者の襲名披露の前に親方は彼を呼び出し、自分のために苦労した者(木暮)に感謝しろというような説教をする。いくら自分のために尽くしてくれたと言っても殺人を犯し、他人のカネをだまし取ったような者である。役者が内心感謝する気が起きても不思議でないが、他人の親方が言うようなことか。

この映画で一番感心するのは、明治の街、当時の役者の世界、それがセット等で美しく再現されているところであった。

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