2021年5月5日水曜日

黒田龍之助『物語を忘れた外国語』新潮文庫 令和3年

著者はスラヴ語を専門とする語学者。

この本はよくあるような、また期待する読者も多いと思われる語学の勉強法、上達法を述べた書ではない。語学勉強法に関する知識を得られたとしてもそれは結果である。物語(文学)と外国語、あるいは語学の関係を書いている本である。最近の風潮に合う、道具としての外国語、特に英語、意思疎通の手段としての英語、ビジネスに使える英語といった内容を論じる本ではない。外国語で文学を読む、それも原語で読むだけでない。日本文学で翻訳されている英語以外の言語で読むといった話題もある。著者は語学者で語学が好きである。その関連で色々な言語の夫々の特徴があり、諸外国の文学を原語で読むべきだ、などと言う観点でなく論じる。文学が好きな者なら面白く読み進められる。

現代は地球化の時代と言われ、外国語特に英語の必要性、また多文化への関心と尊敬すべきだという風潮がある。外国語への関心は今までになく高まっているだろうが、実用主義に走り過ぎているという現状からすれば、本書のような本は大いに存在価値があると思われる。

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