2021年5月23日日曜日

甲賀三郎『強盗殺人実話』河出書房 2018

「明治大正実話全集」第3巻(平凡社)昭和4年刊行のうち、10編選んだ集成。内容は以下の通り。

お茶の水おこの殺し/二本榎惨劇/小名木川首無死体/お艶殺し/小石川七人斬り/鈴弁殺し/名古屋駅行李詰め屍体/大井堀事件―疑問の十月二日/女優一家の怪死/ピス健

本書の副題には「戦前の凶悪犯罪事件簿」とあるが、上にあるように明治大正期の犯罪で、昭和戦前は入っていない。

「お茶の水おこの殺し」は明治30年、御茶ノ水の神田川で女(名がおこのと後に分かる)の死体が見つかった。他殺で配偶者の仕業と判明するまで。「二本榎惨劇」は明治42年芝区二本榎町で一家5人が皆殺しに会った。警察の捜索にもかかわらず迷宮入りになったところ、3年後の大正元年に同じ町内で、一家3人皆殺しの事件がまた起こった。最終的に若い男の犯行と分かるまでの捜査。「小名木川首無死体」は明治43年、深川の小名木川で首無しの女の死体が見つかった。死体解剖で年齢の推定を誤り、捜査に影響した。「お艶殺し」は明治43年、今の東京駅前、当時は三菱ヶ原と称した寂しい原っぱで、若い女の死体が見つかった事件。「小石川七人斬り」は東京小石川の東電出張所で七人も殺害された事件。「鈴弁殺し」は本集中、最も有名であろう。実話集成に良く収録されている。大正8年、農商務省のエリート官僚による、商人(鈴木弁蔵)殺しである。バラバラにしてトランクにつめ、信濃川に流したがトランクが浮いてきて発覚したという、秀才にしてはお粗末な結末となった。「名古屋駅行李詰め屍体」は大正10年、名古屋駅で受けた行李に死体が入っていた。発送地が東京であったためそちらで殺されたらしい。鮎川哲也の小説を思い出させる。「大井堀事件」は仙台郊外の七郷村の大井堀という小川で男の死体が見つかった。容疑者との尋問、調書の写しが延々と続く。「女優一家の怪死」は大正13年、女優・歌手(「船頭小唄」を歌った)中山歌子の、当時は郊外であった東京大岡山の家で家人3人が殺害された。中山は療養で留守のため難を免れた。「ピス健」は我が国ピストル強盗のはしり。大正14年、大坂茨木町の飲食店で夜中、銃で中居が殺害された。これ以前から関東でもピストル強盗が出没していた。

何しろ昭和初期に書かれた明治大正の実話集である。当時の警察は捜査が今と比べて未熟だっただけでない。拷問で自白させ犯人と見なしていた。例えば「二本榎惨劇」では容疑者の男が留置場で縊死した。冤罪である。後に真犯人が分かった際、誣告した男も自殺したという。著者の甲賀が参照した資料使い、今の者が書けば、相当程度記述は変わってくるはずである。

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