2020年10月9日金曜日

ホフマン『マドモワゼル・ド・スキュデリー』 Das Fräulein von Scuderi 1819

 


E.T.A.ホフマン原作の中編小説。副題にルイ十四世の時代の物語とあるように、当時のパリが舞台。怪奇小説で探偵小説としての面があるが、主題は若い恋の成就にスキュデリー嬢という国王の覚えめでたい老嬢の活躍であろう。

当時のパリでは犯罪が頻発していた。特に宝石装飾品を奪われ、場合によっては殺される事件も珍しくなかった。捜査のため特別な機関が創設された。しかるに犯人は捕まらない。

ある夜、スキュデリー嬢の家の扉を激しくたたく者がいる。女中は怯えて開けない。警察が来そうになったのでその者は逃げる。扉の外に箱が置いてあった。翌朝開けると首飾りなど宝石が入っている。スキュデリー嬢はそれを友人の侯爵夫人のところへ持っていく。夫人はこの細工が出来るのは、匠カルディヤックしかいないと言う。後にスキュデリー嬢は馬車に乗って渋滞に会い、その時手紙を馬車に投げ入れる者がいる。手紙を読むと宝石類は、カルディヤックに返せ、さもないと災難がふりかかるとある。

2日後、スキュデリー嬢がカルディヤック家を訪ねると、その死体が運び出されるところだった。容疑者は弟子のオリヴィエで引き立てられる。カルディヤックの娘のマドロンは悲嘆の極で、オリヴィエが犯人の筈がないと言う。オリヴェエを愛していた。オリヴィエはこれまでの連続殺人事件の犯人に仕立てられる。しかしオリヴィエは誰かをかばうためか、自分が無罪と主張しても、それ以上は黙して話さない。オリヴィエの無罪を信じ、スキュデリー嬢は奔走すする。最後には真相、これまでの謎、連続殺人事件がなぜ起きたか、犯人などが明らかになる。

スキュデリー嬢は実在の人物、またパリの連続殺人事件も実際にあった。本編は殺人事件の真相解明という点から見れば探偵小説である。探偵小説の嚆矢とされているポーの『モルグ街の殺人事件』(1841)よりも20年以上早い時期の公表である。

中野孝次訳、河出書房世界文学全集第3期第10巻、昭和40

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