2018年1月4日木曜日

フリーマン『歌う白骨』嶋中文庫、大久保康雄訳 2004



 商品の詳細
倒叙推理小説の始祖、オースチン・フリーマンの短篇小説集。法医学者で弁護士のソーンダイク博士が活躍する。原作の諸編は20世紀初頭に発表され、当時はホームズと並んで有名だったそうだ。

収録は「オスカー・ブロズキー事件」「計画された殺人」「反抗のこだま」「落魄紳士のロマンス」「老いたる前科者」である。
各作品は前後半に分かれ、前半で犯罪を描き、後半でソーンダイク博士が登場し謎を解く。トリックが最後に種明かしされる普通の推理小説は子供騙しのものが多く、大人になってから読めたものでない。まず犯罪を描き、それが如何にして解決されていくかを描く倒叙推理小説はまだましと思うかもしれない。

殺して列車に轢かれたように見せかける「オスカー・ブロズキー事件」は、一番評価が高いそうである。書名になっている「歌う白骨」は「反抗のこだま」の後半である。船乗りを燈台から落とし事故のように見せかける。しかし被害者の白骨が犯罪を暴くというドイツ民謡があって、事件解決後、類似性が指摘される。それから題名になった。
「落魄紳士のロマンス」は落ちぶれた男がパーティー会場でかつての恋人と出会うから始まる、普通の傑作短篇集に入れてもいいような佳篇である。他の2篇はいずれも他人に罪をなすりつけようとする犯罪である。

ソーンダイク博士が普通の人物で、科学的方法を駆使して難なく事件を解決する。それがホームズに比べ単調なので、今ではかつてほど有名でなくなっている、と解説に説明がある。

0 件のコメント:

コメントを投稿