2017年11月7日火曜日

ヌオリワーラ『牧場の少女』講談社世界名作全集、森本ヤス子訳、昭和27年



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フィンランドの女流作家アウニ・ヌオリワーラ作。カトリという名の少女が、農場や屋敷で働く話。
少女カトリは自分の家が貧しく、余裕がないため農場に働きに行く。その道中から話は始まる。途中で会った親切な小父さんは馬引き車で送ってくれる。
行った先のライコラ農場では牛などの家畜番の仕事をする。一所懸命に働く。主人はよく怒る。

かなりしてから帰郷すると母がいない。お祖母さんに訊くと再婚してテンペラ屋敷に、妹と行ったと言う。そこの邸を訪ねる。妹と会っても最初、自分が姉とわからない。母もそうである。新しく生まれた赤ん坊(義理の弟)をあやしている。もう自分の母でなくなっている。期待が大きすぎたせいか、ガッカリして思わず非難する言葉を口にする。母親は彼女をぶつ。後で謝る。このあたり娘と母親の微妙な感情が描かれる。

元の農場に戻る。そこで働いていたリカという女中の口利きで、クロラ屋敷へ女中として移る。ここの屋敷は変わっていて、主人は年中旅行していてほとんど家にいない。奥さんは病気がち、ただカトリは可愛がられる。リカは怠けてロクに働かない。カトリを可愛がってくれる大女の女中と下男が結婚する。もう放蕩して家にいない夫に愛想をつかし、奥さんはこの二人に屋敷の管理を頼み、自分は町へ行くことにする。

クロラ屋敷も人が多すぎるので少し人減らしの必要が出てきた。最も若いカトリがその対象になる。金持ちと噂のユントラ屋敷へ移ることになる。決まってから今は屋敷を仕切っている大女は可哀そうに思い始める。ところがこのユントラ屋敷は絵に描いたようにひどい所であった。夫婦やその子供もカトリを徹底的にこき使い、ロクに食事さえ与えない。彼女の織った服も取ってしまって当たり前と思っている。病気になってしまう。手紙でかつてのクロラ屋敷へ窮状を訴える。やって来たかつての仲間の青年は、てっきり冗談だとみんなで思っていたと言う。最終的には馬車でカトリの迎えが来る。給金を上げるなどでなんとか主人はカトリを引き留めようとするが無駄である。最後は妹たちと幸せに暮らせるようになる。

この作品は講談社の世界名作全集の一冊。戦後まもなく刊行が始まり、最終的には全180巻までいった全集の第46巻、比較的初期である。しかしその後あまり翻訳の対象になってこなかったのではないか。同じ講談社の後の、少年少女世界文学全集にも、また翻訳権が森本にあったせいか、他の社の文学全集にも収録された記憶がない。

この作品が再び我が国で親しまれるようになったのは、昭和50年代末期に『牧場の少女カトリ』という題で、テレビの漫画映画化されたためらしい。この漫画は観ていないのでなんとも言えない。ただウィキペディアでもこの漫画映画で載っているし、英語版や母語のフィンランドのサイトにもこの漫画の言及がある。

この本の解説は那須辰造が書いていて、フィンランドはなじみのない国であったが、近頃オリンピックが開催されて我が国にも知られるようになった、とある。本書の刊行された昭和27年はヘルシンキ・オリンピックの年なのである。そしてフィンランドの絶賛、同国をまるで理想の国みたいに書いている。泥棒やスリなどいない。「一歩、町に出ると、すりや強盗の多い日本と、なんというちがいでしょう」(p.341)とある。
独立した当時の日本がひどく貧しかったとは想像できるが、そんなに物騒な国という認識だったのだろうか。

本書には原題や原書発行年が書いていない。先述のテレビ漫画ウィキペディアの英語版を見ると原題はPaimen, piika ja emäntäで、英訳を見ると「羊飼い、女中、主婦」くらいの意味らしい。原書刊行年は1936年。翻訳は原作が出てから16年目である。

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