2023年9月30日土曜日

伊藤隆敏・星岳雄『日本経済論』第2版、東洋経済 2023

英語で出版されたThe japanese economy 2nd. ed.を翻訳した本。初版は伊藤のみの著であったが、第2版では星が共著者として加わっている。内容は項目別歴史的にこれまでの日本経済を経済学を使い分析する。経済学の日本経済分析への応用である。実証分析例も多く取り上げている。目次は次の様。

第1章 日本経済入門/第2章 日本経済の歴史/第3章 経済成長/第4章 景気循環、バブル経済の発生とその崩壊/第5章 金融市場と金融監督/第6章 金融政策/第7章 財政制度と財政政策/第8章 貯蓄・人口動態・社会保障/第9章 産業構造/第10章 労働市場/第11章 国際貿易/第12章 国際金融/第13章 日米経済対立/第14章 失われた20年。

 それぞれの分野での日本の特徴を述べ、それが過去どのように発展してきて、その経済学的理解、これこれの分析例があるといった叙述である。ただ当然だが過去の分析が中心になる。労働市場の章では日本的雇用慣行の分析を紹介しているが、既に過去の話であり、労働事情は急速に変わっている。将来とも変わっていくだろう。雇用の確保は最大の経済課題であり、今後、国民の雇用をどうすべきか。

今、日本経済を論じるなら、最大の関心はなぜ日本はバブル後、経済が低迷を続け先進国の中でも劣等生になってしまったか、これから抜け出す道はあるのか、という点であろう。これまでの支配的な議論はデフレが続いているのだから、供給制約ではない、需要が足りないのだ、だから需要喚起、デフレからの脱却こそが必要、といったものだった。それで20年間、金融緩和を続け、政策論議は金融、デフレだけになってしまった。結果はどうかと言えば大昔の教科書にあった「金融政策は引くことはできても、押すことはできない」(景気引締は可能だが刺激は無理)を思い出すくらいである。ともかく他の議論はされず、これこそ政策論議の「失われた20年間」ではなかったか。

なんだかんだと言っても今の日本は総体的に見れば豊かな生活を送っているだろう。これは過去の遺産による。今働いている20歳代が高齢になり引退して生活を送る時代になった時、現在ほどの生活を送れるだろうか。「これまでも日本経済は、幾多の試練を乗り越えてきた」と本書にある。政府の文書ならそう言わざるを得ないだろうが、正直にそう思える人はどれほどいるのか。そういった点を見据えて経済論議をしなくてはいけない時代になっている。


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